研究課題/領域番号 |
19KK0207
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分49:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
由井 克之 長崎大学, 熱帯医学研究所, 特命教授 (90274638)
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研究分担者 |
井上 信一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (20466030)
バヤルサイハン ガンチメグ 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (80841353)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2020年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2019年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | マラリア / フィリピン / 免疫記憶 / T細胞 / 感染対策 / 抗体 / 英国 |
研究開始時の研究の概要 |
マラリア自然感染治癒後の免疫記憶が維持されるのか否かについては、諸説あり一定の見解は得られていない。ロンドン大学衛生学熱帯医学大学院(LSHTM)は、フィリピン共和国・熱帯医学研究所の研究者が共同で、フィリピンにおいてマラリア感染調査研究のフィールドを展開してきた。我々はこのフィールド研究に参加し、マラリア免疫記憶の維持に関する調査研究を共同で行う。マラリア撲滅地域、対策有効地域、流行地域の3地区において、末梢血免疫細胞の原虫抗原特異的免疫応答を解析する。B細胞はLSHTM、T細胞の解析は主として我々が担当する。今後のワクチン開発やマラリア再流行への対策に貴重な基礎データを提供する。
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研究実績の概要 |
フィリピンは、近年マラリア対策が進み、マラリア感染者数は急激に低下し、パラワン島南部に限局するに至っている。本研究は、フィリピン国内にマラリアが過去に撲滅された地区、コントロールされている地区、今でも感染がある地区を対象フィールドに設定し、過去のマラリア感染者の免疫記憶がどの程度維持されるのか調べることを目的とした。英国・ロンドン大学衛生学熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical Medicine, LSHTM)およびフィリピン熱帯医学研究所(Research Institute for Tropical Medicine, RITM)との国際共同研究によるフィールド調査研究である。各地区から約35名のマラリア感染歴のある被験者を募り、末梢血白血球を分離し、T細胞とB細胞のマラリア原虫抗原に対する特異的免疫応答を解析する計画である。 しかしながら、本研究が開始された直後の2021年からCOVID-19のパンデミックのためフィリピンへの渡航は不能で、調査及びサンプル収集は不可能であった。2022年は、ルソン島への渡航は可能になり、RITMスタッフによる感染撲滅地域におけるサンプル採集に参加した。2023年になって、ようやくマニラから流行地パラワン島への渡航が可能になり、RITMスタッフを中心にパラワン島でのサンプル採集を実施した。細胞は、凍結してマニラのRITMに運び、解凍して実験を実施した。 末梢血白血球をマラリア原虫抗原で刺激し、活性化マーカーの発現を調べるActivation Induced Marker Assayを実施し、マラリア原虫抗原特異的CD4+ T細胞を同定することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本プロジェクトが開始した直後の2021年と翌2022年は、COVID-19パンデミックのために海外渡航がかなわず、また当該国フィリピン国内の移動も制限されたためにサンプル採集をすることができなかった。2023年になって、ようやくフィリピン・パラワン島への渡航が可能になり、サンプル採集を開始することができた。この間、共同研究先の英国LSTHMとフィリピンRITMの研究者とは毎週ZOOMで連絡をとり、継続的に状況の確認と研究計画の打ち合わせを実施した。 2023年度は、サンプル採集を継続するとともに、凍結したサンプル(末梢血白血球)を用いてAIMアッセイを行った。細胞を解凍後、マラリア原虫抗原で刺激2日間培養し、その後原虫抗原で刺激した時にのみ活性化されたT細胞に発現誘導されるマーカーをフローサイトメロリーで解析した。その結果、マラリア原虫粗抗原に特異的なCD4+T細胞を検出することに成功した。 一方、本アッセイを進める中で、新たな問題が生じてきた。サンプルは、マラリアが既に撲滅されたルソン島モロン地区とパラワン島内で収集し、液体窒素タンク内に凍結保存していたが、保存状態が不良で、解凍後細胞の生存率が低いサンプルが多数発見された。当初のアッセイは良好だったので、その後問題が発生したと考えられた。生存状態が不良のサンプルは、アッセイに用いることができず、再度サンプルの収集を行わなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画した3年半の期間が経過し、2024年度は1年間の延長期間に入った。パラワン島内のサンプル収集は継続しており、これらのサンプル末梢血白血球は凍結後フィリピンRITMに運搬し、予定通りのアッセイを継続する。 一方、すでに凍結保存したサンプルについては、保存状態がアッセイに耐えるものか否か検討し、使うことができるサンプルについては可能な限り予定したアッセイを実施する。また、凍結状態が不良となった原因も明らかにしなくてはならない。末梢血採血から白血球の分離、凍結保存、解凍に至るまで、かかった時間、温度条件、培養液の選択など、一つ一つ検討し、保存状態をベストにできるよう方法の改善を図る。予定したサンプル数は、統計解析に必要と推測された数なので、これらのサンプルが得られないとなれば、再度サンプル採集を実施しなくてはならない。本研究は、今年度までとなるため、追加が必要となる部分については、新たな研究計画を策定する必要がある。共同研究相手のLSHTMおよびフィリピンRITMと緊密に協議し、本研究を継続発展させる方策を練る予定にしている。
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