研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
多能性幹細胞から得られる心筋細胞(PSC-CMs)は再生医療に加えて、疾患研究や創薬への利用が期待されている。しかし、PSC-CMsは、成体の心筋細胞とはその特性に大きな乖離がある。今後の応用を進めるためには、ヒト心筋細胞の成熟過程の理解と、その理解に基づいた成熟法や解析基盤が必要となる。Johns Hopkins大学Chulan Kwon准教授は新生仔ラットの心臓へPSC-CMsを移植することで、成熟した成体型のPSC-CMsを得る生体内成熟法を確立した。本研究では、生体内成熟法を用いることで、成熟過程のトランスクリプトームと、成熟レポーター細胞の開発と検証を行う。
本研究はJohns Hopkins大学との共同研究として進めている。これまでに心筋細胞の成熟レポーター細胞の作出とそれを用いたスクリーニング(Chanthra et al., Sci Rep, 2020)、トランスクリプトーム解析に基づく心筋細胞成熟メカニズムの探索(Murphy et al., Nat Commun, 2021)などを共同研究の成果として報告してきた。さらに今年度はこれまでのトランスクリプトーム解析と成熟評価を他の臓器にも拡張し、多くの臓器で共通して見られる成熟制御メカニズムを明らかにした(Kambhampati et al., J Comput Biol, 2022)。本研究では、脳、心臓、肝臓、腎臓に関し、GEOに寄託されているマイクロアレイデータをメタ解析し、さらにIngenuity Pathway Analysisにより各臓器の成熟過程で見られる転写因子活性の変化を明らかにした。例えばPPARやPGC1といった核内受容体ファミリー、HDACなどのエピジェネティック因子の活性が臓器を超えた共通した成熟メカニズムとして推定された。また、Johns Hopkins大学Kwon研究室で注力している心臓発生に関する研究にも参画し、新たに心臓前駆細胞が第二次心臓領域をWntを介して制御していることを明らかにした(Miyamoto et al., PNAS, 2023)
3: やや遅れている
コロナ禍の影響を受け、現地での共同研究、特に細胞移植を行う実験が進められず、目指してる成果が得られていない。一方、トランスクリプトーム解析のようなオンラインでも共同研究できる部分については当初予定していた以上の成果が得られている。
上述のように一部遅れがあるため、1年間の延長手続きを行い、2023年度も共同研究を継続することとした。2023年5月には現地学会で直接面談し、今後の方針を決定する予定である。
すべて 2023 2022 2021 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (31件) (うち国際共著 11件、 査読あり 29件、 オープンアクセス 21件) 学会発表 (46件) (うち国際学会 16件、 招待講演 27件) 図書 (4件) 産業財産権 (3件) (うち外国 1件)
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