研究課題/領域番号 |
19KK0221
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分54:生体情報内科学およびその関連分野
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
田部 陽子 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (70306968)
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研究分担者 |
藍 智彦 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (00570128)
鈴木 浩也 順天堂大学, 大学院医学研究科, 博士研究員 (40788551)
早津 徳人 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (80543058)
岡崎 康司 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (80280733)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2020年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2019年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 急性骨髄性白血病 / BCL-2阻害剤 / DNAメチル化阻害剤 / インターフェロン誘導遺伝子 / シングルセル解析 / 骨髄微小環境 / メチル化アレイ解析 / RNA-seq解析 / BCL-2 / DNAメチル化 / single cell RNA-seq / single cell ATAC-seq / RNA-seq / 難治性白血病 / DNAメチル基転移酵素 / Single-Cell ATAC-Seq / バイオマーカー / 白血病幹細胞 / 高齢者 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、AI-DNN解析技術とsingle cell RNA-seq技術を軸とした複数の先端技術を統合した技術プラットフォームをMD Anderson Cancer Centerに構築し、現在進行中の多施設臨床研究白血病幹細胞の精密なプロファイリングを実施する。研究代表者及び研究者グループはMD Anderson Cancer Center等に直接出向いて研究を遂行し、難治性白血病の治療効果を予測・評価するバイオマーカーを決定する。本プラットフォームを通じて持続可能な国際共同研究基盤を確立し、臨床試験における技術活用、検体バンクの連携、人材交流の促進に資するネットワーク強化に活用する。
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研究実績の概要 |
本国際共同研究では、single cell RNA-seqをはじめとした複数の先端技術を統合し、急性骨髄性白血病(AML)症例を対象とした「抗アポトーシス因子BCL-2とDNAメチル基転移酵素の同時阻害」治療前後の白血病細胞の精密なプロファイリングを実施している。これによって、選択的BCL-2阻害剤であるVenetoclaxとDNAメチル基転移酵素(DNMT)阻害剤Decitabineの併用治療(VEN/DEC治療)効果に関わる分子機序の解明と治療の有効性を左右する因子を特定する。初発(ND)AML群と再発/難治性(R/R)AML群それぞれの治療前の遺伝子発現プロファイルについて奏効グループと非奏効グループの遺伝子発現を比較した結果、ND群、R/R群ともに非奏効グループで免疫関連遺伝子の発現低下を認め、ND群ではエネルギー代謝と細胞移動/接着関連遺伝子の発現上昇、R/R群ではリボゾーム生合成関連遺伝子の発現上昇を認めた。また、治療前後の遺伝子発現プロファイル比較では、治療後に脂肪酸代謝やインターフェロン誘導遺伝子(ISGs)遺伝子の発現の亢進が認められた。さらに、これらの遺伝子は、転写開始点領域(TSS)のDNA脱メチル化を伴っていた。当該年度の研究では、昨年度までに得られた結果についてAML細胞株を用いたin vitro実験により検証した。VEN/DEC暴露後のAML細胞株において、耐性責任候補遺伝子の発現上昇とTSSの脱メチル化を伴う遺伝子発現の上昇を認めた。そこで、これらの候補遺伝子のover expression実験を開始した。これまでの研究によって、VEN/DEC治療効果に関わる分子機序として免疫応答、エネルギー代謝が重要であり、これにはエピジェネティックな修飾が関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、「抗アポトーシス因子BCL-2とDNAメチル基転移酵素DNMTの同時阻害」臨床研究において採取された治療前後の患者サンプルを用いて前年度までに行われたRNA-seq解析とメチル化アレイ解析の結果に基づいて、治療耐性候補遺伝子を抽出し、AML細胞株を用いた検証実験を実施した。新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって、研究者の物理的な交流の自粛が続いていたが、本年度は、研究者の交流が再開され、日本において先行実施してきた研究の内容を共有した。本年度の研究においては、RNA-seq解析とメチル化アレイ解析結果に関して、インターフェロン誘導遺伝子(ISG)を中心に統合的解析を行い、抽出されたVEN/DEC耐性責任候補遺伝子について、VEN/DEC投与後の変化の検証を行った。VEN/DEC暴露後のAML細胞株において、耐性責任候補遺伝子のTSS領域の脱メチル化を伴う遺伝子発現の上昇を認めるなど、良好な結果が得られたため、候補5遺伝子のover expression実験を進めた。これらの細胞株は、元来VENおよびDECに感受性で、VEN/DEC併用で相加効果を示したが、耐性責任候補遺伝子のover expressionによりVEN/DEC暴露後のapoptosis減少と細胞増殖の抑制が認められた。以上のように、交流活動とともに、VEN/DEC治療効果に関わる免疫応答、エネルギー代謝に関わる責任遺伝子の関与の実証実験を実施し、研究活動は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、scRNA-seqおよびscATAC-seqをはじめとした複数の先端技術を統合し、米国MD Anderson Cancer Centerにおいて実施されている臨床試験の治療効果を予測・評価するバイオマーカーの特定を目指した国際共同研究を推進している。今後の研究では、① 患者検体を用いた研究結果から抽出された耐性責任候補遺伝子について、AML細胞株を用いた実証実験を進める。本年度の研究によってエネルギー代謝関連遺伝子がVEN/DEC耐性に強く関与することを示唆する結果が得られたため、これらの遺伝子をover expression させたAML細胞を活用し、細胞外フラックスアナライザーを用いてエネルギー代謝に関わる検証を開始する。② DNAメチル化阻害剤によって通常はエピジェネティックにサイレンシングされている内在性レトロウイルス(ERV)が活性化され、インターフェロン応答の誘導を介して腫瘍免疫に影響を与える、という仮説に基づき、VEN/DEC療法によって生じる骨髄微小環境における免疫系の活性化をscRNA-seqおよびscATAC-seq解析により検証する。今後、VEN/DEC投与によるERV再活性化の有無とその機序および効果について、新規解析法を用いて患者検体を用いた検討とAML細胞を用いた検討を並行して進める。これらの研究により、耐性の新しいメカニズムを特定する。
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