研究課題/領域番号 |
19KK0234
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
中道 裕子 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (20350829)
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研究分担者 |
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
荒井 敦 松本歯科大学, 歯学部, 准教授 (00532772)
堀部 寛治 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (70733509)
岩本 莉奈 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 助教 (20907216)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2020年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2019年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 高感度レポーターシステム / プロテオゲノミクス / Wnt / 骨芽細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
Wntシグナルの破綻は様々な病態をもたらす。疾患モデルにおけるWntシグナルのプロテオゲノミクス解析は、重要な発見をもたらしてきた。しかしどのWntシグナル分子が骨形成に重要か不明な点が多い。本研究では、海外共同研究者Major博士の研究室で開発した解析システムを利用して、骨形成におけるWntシグナル調節因子を①ゲノムワイド遺伝子機能獲得アプローチであるCrispr-Aスクリーニング、②リン酸化質量分析、および③活性化リン酸化酵素を定量するmultiplexed kinase inhibitor beads-質量分析、により同定する。本統合的解析により代謝性骨疾患の治療薬標的分子を決定する。
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研究実績の概要 |
どのWntシグナル分子が骨形成に重要か不明な点が多い。2022年度は、質量分析リン酸化プロテオーム解析によりWntシグナル依存的にTGFbetaファミリーサイトカインのリン酸化が有意に亢進していたことを見出した。以降、この分子の解析に注力した。このTGFbataファミリーの高リン酸化は骨形成促進に寄与し、治癒促進に貢献している可能性があることを示した。2023年度は、このTGFbetaサイトカインが、骨形成低下を伴う病態でどのような挙動を示すか解析した。重度の骨形成低下を伴う病態モデルとして、i)高ビタミンD症とii)慢性腎臓病モデルマウスの解析を行った。慢性腎臓病モデルは、アデニン給餌による方法を用いた。種々の血清パラメーターを調べ、慢性腎臓病がこのアデニン給餌マウスにおいて誘導されていることを確認し、さらに腎性骨異栄養症を発症していることを組織学的解析と骨のマイクロCT解析により確認した。さらに、両モデルマウスにおいて骨形成促進因子であるWntの阻害因子スクレロスチンが血中で高レベルであることを発見し、このTGFbetaサイトカインのレベルが低下していることがわかった。高ビタミンD症と慢性腎臓病による骨形成低下と軟組織石灰化には、Wntシグナル抑制因子Sclerostin、リン利尿ホルモンFGF23と糖転移酵素の関与を示唆するデータを得た。以上、2023年度は、この二つの重度骨形成低下病態モデルを研究することで、TGFbetaシグナル分子に加え、骨芽細胞のビタミンD受容体とWntシグナル下流で作動する骨再生に関与する3因子を見出すことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度から2022年度はCovid-19の蔓延のため、共同研究先への長期滞在が困難であり、実験実施に必須となるvisaの手続きが出来ず、客員研究員としても身分を得ることが出来なかった。2023年度は新しく入室した大学院生の実験指導のため、共同研究先滞在のチャンスが無かった。したがって2022年度に引き続き2023年度は、本課題の海外共同研究者と代表者の共同研究において、リン酸化プロテオーム質量分析で同定したTGFbetaファミリー高リン酸化ペプチドの意義を見出すための傍証実験を日本国内で行ってきた。そのため、代表者が共同研究先において以前に構築したゲノムワイドCrisprスクリーニング系の次世代シークエンス(NGS)解析は中断したままである。つまり肝心のゲノミクス解析の方は中断している。国内で行ったリン酸化プロテオーム解析の傍証実験において、骨折治癒における骨形成の過程で、このTGFbetaファミリー分子の高リン酸化がWntシグナルの下流で重要な働きを持つ可能性を見出すことが出来た。さらに、重度の骨形成低下を伴う疾患である高ビタミンD症と慢性腎臓病モデルマウスにおいてTGFbetaファミリーシグナルの低下を示す新しい結果を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、Visaの取得を行い海外共同研究先において、代表者が構築したドロップアウトスクリーニング系で生き残った細胞のNGS解析をすすめる。国内外の他の研究グループによる研究において、種々のWntリガンドと分泌性Wnt antagonist の相互作用が構造化学的に明らかになってきた。そのような中我々は、SclerostinはWnt3aの活性を全く抑制出来ず、Wnt10bとWnt4の活性を強力に抑制することを見出した。さらに成長期および大人の骨の恒常性、および骨折治癒には、Wnt10b, Wnt4が重要であることを示唆するデータを得た。今年度は、Wnt10b, Wnt4を骨形成促進因子として用い、すでに代表者が確立したCrispr-Cas9によるゲノムワイドWntシグナルスクリーニング系を用いて、Wnt3aの時と同様のスクリーニングを行い、成長期および大人の骨形成、骨折治癒に必須の因子を同定する予定である。また、我々が同定したWntシグナル依存的なTGFbetaファミリー分子のリン酸化の意義を、リン酸化部位変異タンパクを様々な未分化間葉系細胞に過剰発現させることで解明する予定である。また、Wnt10b, Wnt4とこのTGFbetaファミリー分子の相互作用が、高ビタミンD症と慢性腎臓病ので認められる重度の骨形成低下と関与しているか検証する予定である。
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