研究課題/領域番号 |
19KK0251
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
和気 秀文 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 教授 (50274957)
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研究分担者 |
グホ サビン 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (30453179)
山中 航 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (40551479)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2019年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | ストレス / 高血圧 / 運動 / 視床下部 / 視床下部室傍核 / 骨髄 / 炎症 / ミクログリア / 扁桃体 |
研究開始時の研究の概要 |
長期間の心理社会的ストレス暴露は高血圧の発症を促し、放置すると脳卒中や心筋梗塞を招く危険がある。ところがストレスによる高血圧発症機序については不明である。慢性ストレスでは、骨髄由来の炎症細胞が活性化し、扁桃体や視床下部に集積してミクログリアになることが報告されている(脳・骨髄相関)。そこで申請者らは「慢性ストレスによる高血圧の発症は、脳・骨髄相関に起因した“扁桃体-視床下部系の炎症”による」という仮説を立てた。本研究では動物モデルを用いてこの仮説を検証するとともに、運動トレーニングによる、脱ストレス・抗高血圧効果の機序についても併せて検討していく。
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研究実績の概要 |
慢性ストレスでは、骨髄由来の炎症細胞が活性化し、血圧調節に関わる扁桃体中心核や視床下部室傍核に集積して骨髄由来性ミクログリアになることが報告されている(脳・骨髄相関)。以上より本研究では、「慢性ストレスによる高血圧の発症は、脳・骨髄相関に起因した“扁桃体-視床下部(PVN)系の炎症”による」という仮説を立てた。これまでの本事業による成果により、慢性拘束ストレスは、骨髄における炎症反応を誘発し、血液中の炎症細胞の増加とPVNにおける炎症性因子の遺伝子発現増加、さらに骨髄由来性ミクログリアの増加が観察された。また、定期的な運動習慣はストレスによる末梢の炎症反応(骨髄や末梢血の炎症反応)にはほとんど影響しないものの、視床下部における細胞遊走活性化因子の遺伝子発現低下と骨髄由来性ミクログリアの浸潤抑制を導くことが明らかになった。2022年度は以上の成果をまとめ英文誌に原著論文として報告した。また、炎症反応と血圧応答の関連性を明らかにするために、抗生物質であるミノサイクリンの経口投与が脳・骨髄相関に関わる一連の応答とストレス誘発性高血圧を予防するか否かについて検討した。Wistarラットを慢性ストレス群、慢性ストレス+ミノサイクリン摂取群、および対照群の3群に分けた。慢性ストレスは拘束ストレス(1時間/日、5日/週、3週間)を負荷した。介入前後の血圧を尾動脈から非侵襲的に測定し、介入後に骨髄炎症性因子の遺伝子発現をリアルタイムPCRにより解析した。さらに血液サンプルを採取し血漿中コルチコステロン濃度と血液細胞分画について調べた。その結果、慢性拘束ストレスで認められた血圧上昇、骨髄の炎症反応、血中コルチコステロン濃度の上昇、血液中の炎症細胞の増加は、ミノサイクリンの経口投与により抑制された。今後はミノサイクリンが視床下部室傍核の炎症反応に及ぼす影響について明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度もCOVID-19による影響を受け渡米できず、米国で行う予定の研究が進まなかった。しかし当該年度も、外国人研究者とオンラインにて綿密な打ち合わせを行い、詳細な技術的指導を受けることができたため、当初米国で行う予定だった実験の多くを本学で実施することができた。論文作成に関する詳細な打ち合わせも頻回に行うことができた。従って、総じて(3)おおむね順調に進展していると判断した。2023年度は研究分担者も含め3名の研究者が渡米し研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、ストレスに対する抗生物質ミノサイクリンの効果について検証する。ラットを3-4週間拘束し(1時間/日、週5日)、慢性ストレスモデルを作製する。ストレスを負荷しない対照群、ストレス群、ストレスに加え、ミノサイクリンを投与する群の3群に分け、3から4週間の飼育期間終了後、視床下部のRNAを抽出し炎症性因子等の遺伝子発現について調べる。さらに免疫組織化学的手法を用いて視床下部室傍核における骨髄由来ミクログリアの存在有無等について明らかにする。また、トレド大学による技術支援を受けて、自律神経性循環調節系を維持した脳脊髄標本(working heart brainstem preparation; WHBP)を用いた生理機能実験を行い、炎症性因子(サイトカインなど)が視床下部室傍核機能に及ぼす影響について検討する。さらにトレド大学にてラットの慢性拘束ストレス及びストレス対策としての運動習慣が、腸内細菌叢に及ぼす影響についても調べ、自律神経性循環調節に及ぼす脳・骨髄相関に加え、脳・腸相関の関与についても併せて検討する。尚、当初フロリダ大学で実施予定であったマンガン造影MRIについては、共同研究者のDr Zubcevicが、2021年6月よりフロリダ大学からトレド大学へ移動したことなどの事由により実施することはできないが、WHBP等を用いた実験を工夫することにより、ストレスや運動が視床下部室傍核等の機能的特性に及ぼす影響について十分に解析することが可能である。遺伝子発現解析実験は主としてGouraudが、生理機能実験と免疫染色は主として和気、山中、および大学院生が行う。
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