研究課題/領域番号 |
19KK0269
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
奥田 敏統 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 特任教授 (20214059)
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研究分担者 |
金尾 太輔 山形大学, 理学部, 助教 (40758421)
山田 俊弘 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 教授 (50316189)
保坂 哲朗 広島大学, 先進理工系科学研究科(国), 准教授 (50626190)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2020年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2019年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 熱帯雨林 / フェノロジー / ドローン / 樹冠計測 / 遠隔探査 / 森林管理 / マルチスペクトル / LiDAR / 生物多様性 / 林冠 / 一斉開花 / 反射スペクトル / 一斉結実 / 訪花昆虫 / 気候変動 / 林冠計測 / 生物季節学 / 一斉開花結実 / 林冠生物 |
研究開始時の研究の概要 |
東南アジアの熱帯地域で2~5年の周期で発生する樹木の一斉開花現象に焦点をあて、森林資源を持続的に利用する上で本現象が有する生態学的意義を明らかにする。一斉開花は様々な生物相のダイナミズムを誘引し、熱帯林の生物多様性が高く維持される要因の一つであるが、林冠部での現象であるため確認が難しく未だ知見が乏しい。本研究ではドローンに小型の分光カメラなどを装着し一斉開花を観測し、それを衛星画像と対応付けることで、過去の一斉開花や、広域規模での一斉開花の定量評価ができる技術を開発する。同時に国際研究機関と共同でデータを共有、気候変動との関連性が分析ができる国際観測ネットワークを構築する。
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研究実績の概要 |
本研究は、東南アジアの熱帯地域で周期的に発生する森林構成種の一斉開花現象に焦点をあて、森林資源を持続的に利用する上で本現象が有する生態学的意義を明らかにすることを目的とする。具体的には、無人航空機(ドローン)を用いて一斉開花・結実を観測し、過去の一斉開花や、広域規模での一斉開花の定量評価ができる技術を開発する。2022年度は、主に以下の項目について調査・研究を実施した。 マレーシア、ネグリセンビラン州、パソ保護林内に設置した永久観測プロット内で各樹木の樹幹サイズと樹高、胸高直径との関係がドローン空撮によってどの程度、精緻に判読・抽出可能かについて検証を行った。この背景には、同一種でも開花結実を行う個体は、ある一定のサイズに到達していることが前提となる―という仮説からである。樹木のサイズによる開花結実の有無によって一定の傾向が見られれば、ドローン空撮によって、種毎の開花率の割り出しができ、一斉開花の際により広範囲なエリアで効率よく、開花結実率の割合が出せることから、本研究の主目的である、森林管理(伐採の下限サイズの設定)に応用できると考えた。 一方、COVID-19感染拡大の影響をうけ、マレーシアでの現地調査が、計画通り高頻度で実施できなかったため、国内の草地群落(牧草地)において、マルチスペクトルカメラで得られたデータから、植生のphenologyがどの程度評価できるかについても調査研究を行った。具体的には、地上で測定できるSPAD値(植物の葉に含まれる葉緑素(クロロフィル)量示す値)が、ドローン空撮によるRED、GreenとRed edgeとNIRとの関係を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の感染拡大により、予定したほどの頻度で、海外調査が実施できなかったが、マレーシア側のカウンターパートの協力のもと、現地調査が行えた。そのさい、森林構成種がもつphenologyの重要な要素である、樹冠、樹高や樹幹のサイズなどを地上LiDARやドローン搭載型の小型LiDARを用いて計測し、遠隔技術利用による林冠の要素の測定ができた。さらに国内でも植物の健全度(クロロフィル含有量)を、ドローン空撮により評価ができるシステムを構築できたことなどにより、おおむね計画通りに研究を進めることができた。さらに、えられた技術を利用して、他の熱帯地域(ミャンマーの農山村)の農地・森林の時系列的な変動を補足する研究も実施できた。これらは、マレーシアやミャンマーの研究者と協力して実施、運用しており、phenologyに係る森林の動態を評価するための、より簡便な手法開発へつなげることができた。その意味で当該研究分野のネットワークを拡充することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に実施した調査結果を現在解析中であるが、熱帯雨林を構成する樹木の判読と開花結実の有無が識別できれば、ドローン空撮によって、種毎の開花結実率の割合が出せると期待できる。本研究は、樹木のphenologyの視点から森林伐採の対象木の下限サイズを再検討し、生物多様性に負荷のかかからない森林管理の方法を提案することを目的としている。また、様々な場所での、こうした方法の浸潤を促すために、phenology観測研究者とのネットワークを強固にすることを長期目標としている。今後はこの2つの視点から、これまで得られたデータをもとに東南アジア熱帯の研究者との共同研究を進めていく予定である。また、一斉開花結実が数年以内に起こることを想定して、新たなプロジェクト研究を準備する予定である。その際、開花、結実の状況が地域ごとに、また森林の立地条件や人為的攪乱の履歴などの影響に応じて、どのように異なるか、また樹幹・樹冠サイズから割り出す開花ポテンシャルのモデルとどのように異なるかなどについても検証・検討を行う予定である。2022年度はマレーシアやミャンマーなどで得られたデータをもとに現存量、林冠の野生生物のハビタット推定、土地利用分析な度に応用し、6編の論文を発表したが、2023年度は、特に林冠phenologyのモデル化に視点を置いた研究の推進と成果の発表に努めていく予定である。
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