研究課題/領域番号 |
19KK0275
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
宇野 誠一 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (50381140)
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研究分担者 |
仲山 慶 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (80380286)
國師 恵美子 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 助教 (90714866)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2020年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | マレーシア / 底質毒性 / リスク評価 / 海産魚胚 / 下水処理場 / 生物多様性 / 沿岸域 / ジャワメダカ / 魚胚 / 底生生物 / 化学物質汚染 / 底質影響 / 生物影響リスク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではマレーシアの河口域とその周辺沿岸域の海底質汚染に注目する。主にマレー半島東部と西部沿岸域から幾つかの地域を選んで広く底質を採取し、海産魚胚や海産甲殻類を用いた底質影響評価法により、マレーシアの底質の生物影響リスク分布を明らかにする。さらに、環境DNAにより底質中の生物多様性維持の状況を調べ、上記の影響リスクと多様性の関係を検証する。これらの結果をベースに、マレー半島西部にのみ集中して設置されている下水処理場に注目し、東西沿岸域の底質影響リスクや生物多様性レベルを比較して、下水処理によってどの程度底質の生物影響リスク軽減や多様性維持に貢献しているかを明らかにしていく。
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研究実績の概要 |
急速な経済発展に伴い、東南アジア諸国沿岸域では化学物質による底質汚染が進んでおり、特に河口域付近では深刻である。しかし底質汚染による生物影響リスクや多様性の損失への寄与はほぼ未知である。本研究ではマレーシア沿岸域を対象とし、底質影響を調べるのみならず、底質内の生物多様性維持の現状を明らかにし、影響リスクと生物多様性損失レベルの関連を検証する。マレーシアは東南アジアの中でも特に下水処理場普及率が高いが、その設置は西部に偏る。そこで処理場が普及していない東部と普及率が高い西部の生物影響リスクの生物多様性維持の現状を比較し、下水処理場の汚染負荷軽減の貢献度を把握すると共に、環境保全への有用性を明らかにすることを目的とする。 本研究では実際にマレー半島の各河口域に赴き、河口~沿岸域で採泥して、得られた底質の影響評価などを行う予定であったが、コロナの流行により2021年度までは現地に赴くことができなかった。22年度は2回マレーシアに渡航して東側の主たる河口域のサンプリングは終了し、現在西側の調査を実施中である。実施すべき影響試験なども当初の予定よりは遅れているが、順次進めている。海産魚胚を用いた影響評価により、処理場の普及率の低さ故に汚染や生物影響も深刻な状況であると予想していたが、結果的には生物影響リスクが特に大きな地点は見出せなかった。一方で東側は処理場の普及にもかかわらず、ある程度大きなリスクが点在した。この結果と様々な要素の関係を鑑みると、底質中化学物質汚染やその生物影響に下水処理場の関与は限定的であり、沿岸域周辺の人間活動の負荷のみならず、その地形と底質性状の方がマレー半島の底質汚染レベルや生物影響に大きく関与していると考えられた。今後調査を進め、さらにマレー半島沿岸域の底質汚染パターンとリスク分布を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
採択直後からコロナが流行したため、当初予定したマレーシアへの渡航が2022年度中盤まで叶わなかったため、当初の予定よりも多少遅れている。特に、生物多様性の検証、化学物質分析、甲殻類による影響試験などはこれからピッチを上げて進めて行く必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本科研費の期間延長が許可されたため、引き続きマレーシアに渡航し採泥を続ける。 特にマレー半島西側の採泥予定の地点がまだいくつかあり、ここを中心に現地で船をチャーターして採泥する。採泥した底質は一部日本に持ち帰り、海産魚ジャワメダカ魚胚および海産甲殻類のフサゲモクズによる底質毒性試験を実施していく。その結果から各河川域の河口付近~沿岸域におけるリスク分布を明らかにしていく。さらに、これまで採取した底質はプトラ・トレンガヌ大学で冷凍保管しているため、ここからこれまで採取した底質も持ち帰り、特に対応が遅れている生物多様性解析や甲殻類の影響試験を積極的に進めて行く。マレーシアはイスラム教の行事が多くその都度予定を調整しながら渡航を探るしかないが、コロナ終息後、ある程度サンプリングや影響試験、その他の試験の遂行するペースがようやく確立しつつあるので、このまま、当初の計画を遂行すると共に、マレー半島の海域汚染分布パターンはこの研究を始める前に予想したことと異なっていたので、試験終了までにマレー半島の海域における底質汚染とリスクがどのようなところに集中しやすいかを明らかにすることを目標としていく。
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