研究課題/領域番号 |
19KK0298
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
アジア史・アフリカ史
中国哲学・印度哲学・仏教学
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
宮嶋 純子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (80612621)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2023
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
12,610千円 (直接経費: 9,700千円、間接経費: 2,910千円)
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キーワード | ベトナム仏教史 / 仏典刊行史 / 阮朝の仏教 / 東アジア仏教史 / 仏教典籍史 / 典籍流通史 / 印刷史 / 木版仏典 |
研究開始時の研究の概要 |
ベトナムでは18世紀頃から木版印刷が盛行し、様々な種類の典籍が刊行された。それらのうち一部は学術機関によって収集・整理されている。しかし、とりわけ仏教関連文献については、諸寺院が独自に所蔵する典籍資料や木版版木もいまだに多い。 そこで本国際共同研究では、ベトナム北部地域の諸寺院に所蔵される仏教典籍及び木版版木の包括的な調査研究を実施し、刊記や底本の分析を通じて、ベトナム地域社会における仏典刊行事業と典籍の流通、及び近世近代の東アジア仏教圏における仏教文化の交流についての実態解明をはかる。
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研究実績の概要 |
2022年3月より2023年3月まで、ベトナム・ハノイに滞在し、ベトナム社会科学院宗教研究院の客員研究員として、同研究院の支援を得て在外研究を行った。滞在中の主な研究活動は、国家図書館や漢喃研究院、社会科学院図書館等の研究機関に所蔵された仏教関係史料や碑文拓本の調査・収集と、ハノイ市及びバクニン省・バクザン省・ハイズオン省・ハイフォン市等の紅河デルタ地域(ベトナム北部)の寺廟の実地調査である。 また、上記の研究成果として、「福田安禅撰『大南禅苑継灯略録』より見る十八‐十九世紀北部ベトナムの仏教教団」(口頭発表)及び「阮朝初期におけるベトナム北部の仏教教団―福田和尚安禅の仏書刊行と教化活動―」(論文、既刊)を報告した。 これらの報告では、従来日本の学術界ではほとんど知られてこなかった、福田和尚安禅(1784~1863)の行跡を中心に、現代に継承されるベトナム仏教の再構築が図られた時代である18~19世紀北部ベトナムの仏教教団の活動を考察した。福田は、阮朝初期の北部ベトナムの仏教界において主導的な役割を果たした高僧であり、諸寺院で住持をつとめる傍ら、多くの典籍、とりわけ仏教史書の刊行に尽力した。このような福田の活動を支援していたのは、阮朝初期にベトナム北部に赴任し、戦乱の続いた地域の安定に尽力した大臣、阮登楷(?~1854)であった。福田は、阮登楷が赴任した地域の寺院に招かれ、教化活動に従事していた。 福田と阮登楷の事例から、阮朝初期のベトナム北部では、後黎末期以来の戦乱からの復興の過程において、地方官たちと仏教界が密に連携しており、仏教教団が阮朝の初期統治体制の確立に一定の役割を果たしていたことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行により、ベトナムへの渡航予定が約1年遅れたこと、また渡航後も、現地における流行状況にともなう社会活動の制限等のため、特に寺廟所蔵の典籍の調査に支障をきたしており、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ベトナム北部における寺院の実地調査を通じて、近世期ベトナムで刊行された仏教典籍や経典版木の所蔵状況に関する情報の収集を行う。既にこれまでの調査から、ハノイ市バーダー寺・クァンスー寺・バクニン省ティエウソン寺・ハイフォン市ヴァンクアン寺・タイビン省ケオ寺等が当該の古典籍を所蔵していることが判明している。今後は、宗教研究院の協力を得て、これらの寺院所蔵典籍の実地調査を行い、18世紀~20世紀にかけてベトナム北部各地の寺院において行われた仏教典籍刊行事業の実態や、刊行後の流通状況の解明につとめたい。
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