研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
本国際共同研究計画は、申請者がフィンランド西南地方の村落部において遂行している実地調査の成果について、ヘルシンキ大のヴレーデ教授の研究グループが首都圏で進める調査の成果と比較、検討する過程を中心とする。移民ケアワーカーが浸透する都市部の民営化されたケアサービスと、過疎化の進む島嶼部の状況はどのように連動しているのだろうか。従来は村落部のような伝統的家族関係の島嶼部において進む親族介護者支援の試みは、都市部においては移民家族に対しても提供されているのだろうか。こうした問いに取り組むことで、私事化/民営化の進む福祉国家の様相を明らかにしていく。
本研究は、フィンランドにおいて進行する高齢者ケア制度のプライヴァタイゼーション(民営化/私事化)について、地域間の比較研究を行うことで、営利企業の論理と家族/親族をはじめとするインフォーマルな論理の接合領域を描き出した。フィンランドの大学によるCOEプロジェクトに参画することで、申請者自身によるフィンランド西南地方の小規模自治体の人類学的調査の成果を他地域と比較した。地理・人口・言語条件の異なる地域を横断的に分析することで、都市/村落間での頻繁な人の移動によって地域間の連動性が維持されている一方で、村落部においても私的ケアの需給/支援状況にはかなり地域差があることが判明した。
日本における北欧型福祉国家についての実証的な研究は、これまで北欧の社会福祉行政の仕組みやサービス内容を日本に紹介するというかたちをとってきた。これらは主に現地研究者による先行研究の咀嚼と分析が中心としている。。それに対し、これまで申請者が行ってきた地方の小規模自治体での調査に基づいた研究は、20年近くにわたる長期の参与観察から得たデータであり、現地研究者でもここまでの定点長期調査の例は少ない。また、現地研究者による社会福祉制度や介護サービスについての質的調査に村落部での研究は少なく、申請者の研究は現地研究者に対しても有用な調査資料を提供することができた。
すべて 2024 2023 2022 2021 2020
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 12件、 招待講演 1件) 図書 (6件)
Archives of Gerontology and Geriatrics
巻: 116 ページ: 105137-105137
10.1016/j.archger.2023.105137
臨床心理学
巻: 13 ページ: 92-96