研究課題/領域番号 |
19KK0305
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
考古学
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
小野塚 拓造 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 主任研究員 (90736167)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2023
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
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キーワード | 後期青銅器時代 / 鉄器時代 / 南レヴァント / フェニキア / カナン / 土器 / レヘシュ / ペルシア時代 / 交易 / レヴァント / イスラエル王国 / アッシリア / ティルス / 後期銅器時代 / 都市国家 / エスニシティ |
研究開始時の研究の概要 |
前12~前10世紀頃の地中海東岸地域は、青銅器時代の諸文明と秩序が崩壊し、新たな世界が形成されていく歴史的な過渡期にあった。そして、この時期を境に出現した諸集団(フェニキア人、古代イスラエル人、アラム人など)が、その後の世界に多大な文化的影響を及ぼすことになる。本国際共同研究は、世界史におけるこの重要な画期について、新たな知見を加え、理解を深める試みである。研究代表者は、オルブライト考古学研究所およびトロント大学に滞在し、地中海東岸地域の文化的・社会的動向について、「フェニキア人」の出現に主眼に置きつつ、滞在先の共同研究者とともに考古学データを持ち寄って検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、繁栄を誇った青銅器時代の文明が瓦解し、その後、現在まで文化的影響を残すことになる諸集団が現われたとされる東地中海世界の初期鉄器時代の様相の一端に、考古資料からせまるものである。2022年年度は、オルブライト考古学研究所を拠点に、主に、イスラエル国内に保管されているレヘシュ遺跡およびゼロール遺跡の出土資料の検討に取り組んだ。 特に、レヘシュ遺跡は、青銅器時代の重要な都市遺跡として注目を集めるようになっているが、本年度の調査によって、本研究の対象である後期青銅器時代の後半(前13世紀)から鉄器時代IIA期後半(前9世紀)までの居住史と物質文化の大枠を具体的に復元できるようになった。ゼロール遺跡の出土資料の大部分についても、1960年代に発掘調査が実施されてから未整理の状態であったが、その一部を実見することができた。その結果、同遺跡に青銅器時代から鉄器時代への移行期(前12世紀)に居住が継続していたことを確認することができた。フェニキアと呼ばれる地域は、現在のレバノンからイスラエル北部の沿岸地域に相当するが、その南端に位置するゼロ-ル遺跡と、近隣地域の主要都市の1つであったレヘシュ遺跡の資料から得られた新知見を、報告書が出版され研究が進んでいる他の遺跡の様相と比較検討した。その結果、重要な点として、1)居住地と物質文化の継続性が強いこと、2)各地域で拠点となる都市の交替がみられること、3)その中で主要な(特定の?)交易ルートが形成されていった可能性が高いことが見えてきた。これらの要素は、「大きな変化」とされる青銅器時代から鉄器時代への移行期のローカルな実相であり、これをフェニキアの諸都市が発展した背景の一部として位置づけることができれば意義のある研究成果となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画で2020年度に予定していた外国機関への滞在を、本年度にようやく実施することができた。調査記録の再検討、出土資料の整理と分析、報告書の執筆など、労力と時間を要する基礎作業に本腰をいれて取り組めたことで、研究成果をまとめる次の段階に進めることができた。ただし、計画では昨年度までに終えているはずの基礎作業であり、最終年度となるはずであった今年度は、主に研究成果の出版準備に取り組む必要があった。そのため進捗状況は「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス等の影響により本研究は進捗が遅れており、事業期間を1年間延長し、2023年度に研究成果のとりまとめや出版に尽力する予定である。その中で、研究対象とする地域において、青銅器時代から鉄器時代への移行期に発展した都市の性格と経済活動、およびフェニキア都市交易活動の痕跡が増加する後期鉄器時代の変化とその背景といった、学術的に重要なテーマについては、深く掘り下げる研究を実施する。
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