研究課題/領域番号 |
19KK0310
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪市立大学 (2019, 2021) |
研究代表者 |
笹島 秀晃 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (30614656)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2023
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
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キーワード | ニューヨーク / アート / ミュージアム / 商業ギャラリー / シンボリック・バウンダリー / 社会ネットワーク / Henry Geldzahler / 作品市場 / 美術制度 / オルタナティブ・スペース / 制度変化 / 作品市場のグローバル化 / ロンドン / 東京 |
研究開始時の研究の概要 |
本国際共同研究は、絵画や彫刻といった美術領域において20世紀後半に進展した「グローバルな作品市場の拡大」にともなう、ニューヨーク・ロンドン・東京における都市レベルの美術の制度変化を明らかにすることである。グローバルな作品市場に組み込まれるなかで、都市における作品の生産・流通・受容のネットワーク、および作品評価や価値形成の過程がどのように変化するのか。社会ネットワーク分析や歴史資料の精緻な読解を組み合わせた複合的な方法で解明する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、美術領域において20世紀後半に進展した「グローバル作品市場の拡大」にともなう、ニューヨーク・ロンドン・東京における都市レベルの美術の制度変化を明らかにすることである。2年目の計画で予定されていた内容は、各美術業界における作家や美術施設の活動状況や相互のネットワークを記述するための資料分析を行うことであった。それぞれ都市を拠点に活躍した主要作家の経歴データを活用し、美術施設間の取引関係の推移を計量的に分析することを予定していた。 2022年5月に発表した論文は、こうした2年目までに計画されていた作業の成果の一つである。当該論文では、ニューヨークの美術業界を構成するミュージアム、商業ギャラリー、大学文化施設の3組織における関係性の変化を、近年社会学で着目されているシンボリック・バウンダリーSymbolic boundariesの推移を明らかにすることで分析した。具体的には、ニューヨークのメトロポリタン・ミュージアムで1969年に開催された展覧会、New York Painting and Sculpture: 1940-1970に掲載されている43人の作家の個展リストを資料として、展示会場と展示作家の2 mode networkから展示会場同士の1 mode networkを抽出し、ブロックモデリングの手法で業界内の境界の所在を明らかにした。この研究の結果、ニューヨークの美術業界の変化について先行研究で指摘されていた知見にとどまらず、より多様な観点から描き直すことが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度においてもコロナ禍は収束を見せず、申請書作成時に計画していた渡航すべてを実施することができなかった。当初予定されていた3都市の美術の制度変化に関する資料の収集が実現できず、国内からアクセス可能なデジタル化された一次資料、くわえて二次資料を新たに収集する作業を始めた。 資料収集の関係で、ミュージアムや商業ギャラリーといった、美術業界を構成するメインストリームの担い手よりも、そうしたメインストリームの担い手を敵手とした、芸術家を主体とした制度批判の社会運動に注目し始めた。制度批判の社会運動に着目することで、各都市の美術領域における特徴を間接的に明らかにできる可能性を追求している。具体的には、1969年頃のニューヨークにおけるArt Workers Coalitionなどの運動、1970年頃の東京における美共闘、1968年頃のロンドン・ホーンジー Hornseyにおける美学生の運動に着目し関連資料を収集中である。3都市の制度批判の社会運動を分析することで、それぞれの美術業界の特徴の違い検討するための素材を少しずつではあるが獲得することにつながっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度前半は、各都市において1970年前後に展開されたメインストリームの美術業界の担い手を敵手とした制度批判の社会運動を比較検討することである。収集した資料から、運動組織の特徴や具体的な出来事の推移を明らかにした上で、主に当事者の証言等の記録から、当時の美術業界における問題の所在を特定した上で、そうした社会運動の特徴を明らかにする。また、こうした制度批判の社会運動が、その後どのような組織に展開していったかを比較検討することで、各都市の現代までにいたる美術業界の制度変化の一側面を明らかにすることを目指す。この研究の成果は、2023年6月のInternational Sociological Associationのメルボルン大会にて発表予定であり、その後、国内査読誌への投稿を計画している。なお、コロナ禍も新たな時期に入り国外渡航に関する制限も大幅に緩和されたため、23年度中にはニューヨークとロンドンへの渡航を計画し、遅れていた資料の収集を目指す。こうした資料収集の進捗によって、メインストリームの美術業界の担い手に関する研究も可能な限り進めていく。
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