研究開始時の研究の概要 |
本研究では, 代数幾何(特に双有理幾何)における超越的な手法(複素解析/微分幾何の手法)を発展させ, 正則切断の拡張問題や正曲率の多様体への応用を与える. 具体的には, 双有理幾何に現れるLC特異点に対する複素解析的理論の構築を目指す. その応用として極小モデル理論におけるDLT拡張予想を大目標に正則切断のL2拡張問題を研究する. また, Bergman核や葉層構造の理論を発展させ, 正曲率の多様体に対する構造定理を研究する.
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研究実績の概要 |
本研究では, 代数幾何(特に双有理幾何)における超越的な手法(複素解析/微分幾何の手法)を発展させ, 正則切断の拡張問題や正曲率の多様体への応用を与える. 2022年度は, 非負曲率多様体の構造定理を応用し, 一般化された極小モデル理論(the generalized Minimal Model Program)のカテゴリーでの非消滅予想を研究した. その成果として, ネフ反標準束を持つ3次元の多様体に対しての非消滅予想を解決できた. 反標準束に対してアバンダンス予想は成立しないが消滅予想のみは期待できる点は, 興味深く背後に幾何学的な現象があることが期待される. これはT. Peternell (Bayreuth大学) V. Lazic, N. Tsakanikas, Z. Xie (Saarland大学)との共同研究である. また, ネフ余接ベクトル束を持つ射影多様体のアバンダス予想も研究した. その成果として, 第二チェーン類が消える極小な射影多様体に対してアバンダンス予想を解決し, Iitaka射のファイバーの変動を微分幾何的な正値性の条件で記述した. これはM. Iwai(大阪大)との共同研究である. さらに, LC特異点を持つ多様体に対する単射性定理(消滅定理の一般化)も研究した. 成果として藤野予想を解決した(この予想自体はCao-Paunにより2022年に解決済み). 代数幾何的な状況における単射性定理は混合Hodge理論で証明されていたが, 我々の証明は単純正規交差因子上での調和積分論の研究に基づいており, 両手法の対応関係の研究が可能になって点も成果である. これはM. Chan, Y. Choi(Pusan National University)との共同研究である.
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