研究課題/領域番号 |
19KK0349
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
猪奥 倫左 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50624607)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2023
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
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キーワード | スケール変換 / 指数型非線形項 / 特異定常解 / q-指数関数 / 非線形スケール変換 / 凝スケール変換 / q-対数関数 / 対数型特異性 / 臨界問題 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,基課題で得たスケール不変則を統合する手法を発展させ,臨界問題を解析する包括的な手法を開発する.そのためには,実解析的手法・幾何解析的な知見の両方が高い水準で必要となる.臨界問題に関する実解析・幾何解析的な研究は伝統的にイタリアで盛んであり,特にFirenze大学,Milano大学が世界を牽引する研究拠点となっている.そこで本国際共同研究ではCianchi氏(Firenze大学),Ruf氏・Terraneo氏(Milano大学)と共同研究を行い,必要な知識・技術の提供を受ける.これにより基課題で得たスケール則を融合し,臨界問題に対する包括的な解析手法を開発する.
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研究実績の概要 |
半線型熱方程式の適切性,特に一意性と非一意性について研究を行った.Ni--Sacksに端を発する非一意性の研究は特異定常解の構成が鍵となる.この特異定常解の構造が,非線形項の増大度に応じて劇的に変化することが知られている.具体的には,べき乗型の非線形項を次元が3以上の空間で考察すると,ある臨界指数が存在して,べき乗指数を変化させるとき臨界指数を境に特異定常解の斉次性が壊れる.一方,空間次元が2の場合には,臨界指数は形式的に無限大となり,べき乗非線形項は全て劣臨界としての振る舞いを見せる.本研究では空間2次元の場合にべき乗指数よりも真に強い非線形性,特に指数増大する非線形項を考察し,特異定常解とそこから分岐する滑らかな解を構成することで,3次元以上の臨界および優臨界に相当する結果を得た.その過程において,これまでの代表者の研究を発展させることでべき乗特有の従来の証明方法を改良し,一般的な指数増大度を持つ非線形項に対する特異定常解の構成方法を提案した.本結果は先行研究(Ibrahim--Kikuchi--Nakanishi--WeiおよびIoku--Ruf--Terraneo)を完全に含むものである.現在は投稿に向けて結果をまとめ,論文を執筆中である. さらに,Trudinger--Moser不等式の劣臨界近似をRadial lemmaの観点から導出し,Carleson--Changのエネルギーレベルへの収束性を証明した.この結果はProceedings AMSに掲載受理済みである.今年度は研究を発展させ,より強い収束性(例えばGamma convergenceや裁量定数の収束)の証明を試みた.その結果,劣臨界指数$p$に関する不等式の一様有界性が証明できればこれらの強い収束性が期待できることがわかった.現在は一様有界性の証明に継続して取り組んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要で述べた指数型非線形項を持つ半線形熱方程式,Moser--Trudinger不等式の劣臨界近似の両研究は,いずれも対数型特異性に起因する困難を持つものである.本研究において,前者に対してはスケール不変構造に着目した特異定常解の構成方法を構築し,後者に対してはエネルギー臨界レベルの新たな収束生をRadial Lemmaの観点から導出した.これは当初計画で期待した結果を得たものである.一方,両者の融合可能性に対する知見も深まったものの,現在までには数学的主張として書き下すまでには至っていない.今後の研究課題である.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では本年度が最終年度であったが,感染症蔓延の影響で準備期間から渡航期間にかけて大幅な変更を余儀なくされた.また,渡航期間も予定から2ヶ月ほど短縮され,執行計画に変更が生じたため,研究期間を1年間延長した.来年度は,得られた結果を論文としてまとめ,さらに各種研究集会において研究報告を行う.その際,国内研究集会だけでなく海外研究集会においても積極的に発表する.
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