研究課題/領域番号 |
19KK0351
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
気象・海洋物理・陸水学
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研究機関 | 気象庁気象研究所 (2022-2023) 国立研究開発法人防災科学技術研究所 (2020-2021) 東京大学 (2019) |
研究代表者 |
栃本 英伍 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 研究官 (40749917)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,080千円 (直接経費: 11,600千円、間接経費: 3,480千円)
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キーワード | 温帯低気圧 / 前線 / ジェット気流 / 黒潮 / ガルフストリーム |
研究開始時の研究の概要 |
温帯低気圧は中緯度で発生・発達する総観規模の大気現象である。本研究は、海域間で異なる構造を持つ温帯低気圧が生じる原因を明らかにするとともに、異なる海域の温帯低気圧が環境場へ与える影響の違いを明らかにする研究を行う。まず、ジェット気流、水平温度勾配(傾圧性)、海洋などの、海域間で異なる環境場が低気圧の内部構造および力学に与える影響を、データ解析および数値実験を用いて明らかにする。また、低気圧が環境場の傾圧性へ与える影響を調べる診断的手法を本研究に適用し、低気圧と環境場の相互作用の理解進展を目指す。
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研究実績の概要 |
ノルウェーのベルゲン大学地球物理研究所に2023年9月から2024年3月まで滞在し、同研究所所属のThomas Spengler教授と共同研究を行った。大気下層の環境の流れ場の構造が、北西太平洋で発達する温帯低気圧の発達に対する影響を長期の客観解析気象データ(JRA55)を用いて調べた。まず、1979年ー2016年の冬季に北西太平洋で発達した温帯低気圧を自動抽出した。続いて、大気下層の環境の流れ場に対して、低気圧が発達していた場所を基準に低気圧を客観的に分類した。その結果、70%以上の低気圧が環境の流れが合流している場で発達していることがわかった。一方約25%の低気圧は、環境の流れが分流している場で発達していた。また、低気圧の発達度合の違いを調べたところ、合流している場で発達する低気圧の方がより強くなりやすいことがわかった。その原因をエネルギー収支解析によって調べたところ、合流している場で発達する低気圧においては、傾圧的なエネルギー変換および非断熱加熱によるエネルギー生成が分流している場で発達する低気圧よりも大きくなることで、低気圧の発達度合に違いに寄与していることがわかった。得られた成果について、Spengler教授と共著の学術論文を執筆し、投稿した。 また、線状降水帯等の豪雨を引き起こす温帯低気圧の構造や環境場の特徴を調べるために、線状降水帯等の豪雨を伴う温帯低気圧を客観的に抽出し、いくつかの顕著事例の特徴を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナの影響で延期されていた海外渡航を実現し、6ヶ月間の滞在による共同研究を実施することができた。ベルゲン大学地球物理研究所の研究者とのコミュニティを広げることができ、同研究所のセミナーで4回の研究発表を行うことができた。また、今回の滞在で得られた研究成果を学術誌にも投稿することができた。
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今後の研究の推進方策 |
温帯低気圧の発達と大気下層の環境場の流れの関係を調べた研究については、現在投稿中の学術論文の査読結果を待ち、適宜改訂を行い、受理を目指す。また、今回北西太平洋の温帯低気圧で得られた結果を北西大西洋の温帯低気圧にも拡張して調査を行う。線状降水帯を引き起こす温帯低気圧の研究については、顕著現象の詳細な解析を行う。また、統計的な調査も実施し、線状降水帯を引き起こす温帯低気圧構造の平均的な特徴を調べる。
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