研究課題/領域番号 |
19KK0358
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
無機化学
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
志賀 拓也 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00375411)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
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キーワード | 双安定性錯体 / プロトン / スピンクロスオーバー / 低次元錯体 / 多座配位子 / 圧力応答性 / 双安定金属錯体 |
研究開始時の研究の概要 |
双安定金属錯体をもちいたプロトン-電子連動物性を示す機能性材料を開発し、従来にない新しいメカニズムに基づく磁気電気効果や光誘起物性変換を達成し、さらに界面上・複合デバイス内での挙動を調べることで、単一分子のもつ光学特性・磁性・誘電性をナノレベルのデバイスやエネルギー変換材料へと応用する技術基盤を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究では、双安定金属錯体をもちいたプロトン-電子連動物性を示す機能性材料を開発し、従来にない新しいメカニズムに基づく磁気電気効果や光誘起物性変換を達成し、さらに界面上・複合デバイス内での挙動を調べることで、単一分子のもつ光学特性・磁性・誘電性をナノレベルのデバイスやエネルギー変換材料へと応用する技術基盤を形成することを最終目標として研究を進めている。本研究課題の全研究期間を通して、以下の3つの研究を推進している。 (1)応力・電場応答性を示す双安定性材料の構築 (2)プロトン応答性双安定性錯体の基板界面への担持と単一分子スイッチング (3)プロトン応答性双安定性錯体をもちいた全固体電池の開発 令和5年度は、(1)に関連して、応力応答性を示す化合物の開発と物性評価として、顕著な圧力応答性を示すスピンクロスオーバー錯体の合成と磁化率測定を行った。前年度までに合成を行っていた、異なる長さの炭素鎖をもつアルキル基をもつ鉄スピンクロスオーバー錯体の構造決定および磁気測定を中心として研究を進めた。炭素鎖4、6、8のアルキル基を導入した錯体について検討を進めた。 磁化率測定の結果、200K付近でスピンクロスオーバーを示すことが明らかとなり、ピストンシリンダーセルをもちいた圧力印加状態での磁化率測定を行ったところ、一般的なスピンクロスオーバー錯体と比べて、大きな圧力依存性を示すことがわかった。特に炭素数C8のものが最もよい応答性を示すことがわかった。今後は、スピン転移前後の構造変化や圧力印加状態での構造解析などを中心として、応答性に関して検討を行うとともに、アルキル基を利用した基板への担持に関して研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染症に関係する制限が緩和されたため、現地での研究活動を行うために89日間滞在した。現地の設備を利用し、新規錯体の電気化学測定や単結晶X線構造解析、示唆走査熱量測定を行った。さらに、他の研究者とのディスカッションを行うことができ、錯体やポリ酸をもちいた化合物系のデバイス化や電池の研究などに関しても共同研究を計画することができた。特に、ノッティンガム大学に滞在していたスペインの研究者とは分子を使った3Dプリンタによる高分子ポリマーとの複合化研究について詳細に議論し、共同研究を進める計画を立てた。また、研究対象であるプロトンー電子連動物性を示す機能性材料の原料となる錯体合成と分子修飾、およびデバイス化に向けた基礎的データの収集を行った。 海外共同研究者であるNottingham大学のGrahamNewton博士との共同研究を進めるためのディスカッションに関しては、十分に連絡をとっており、共著論文に関しても適宜執筆を進めており、2023年度は2報の共著論文を出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに得られた錯体の物性を詳しく調べ、デバイス化に向けた研究計画を立てる。特に、酸塩基応答性に関して詳しく調べ、基板に担持したときの測定手法に関してもAFM,TEMなどをもちいて検討を行う。圧力に敏感なスピンクロスオーバー錯体に関しては、アルキル基を持つ化合物が有望であると考えられるが、カテナン骨格を持つ分子に関しても良い応答性を持つことが期待されるため、共同研究を中心として新物質の合成を進める。また、様々な置換基をもつ類似錯体の合成も行い、幅広い応用ができるように準備をしておく予定である。
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