研究課題/領域番号 |
19KK0362
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小森 大輔 東北大学, グリーン未来創造機構, 特任教授 (50622627)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
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キーワード | 流木流出 / 斜面崩壊 / 気候変動 / 生物多様性 / 数値シミュレーション / 流木・土砂災害 / モデル / 流木流出統合モデル |
研究開始時の研究の概要 |
近年の日本に限らず増加している流木災害は,今後の気候変動による影響を考慮すると,これまで通りの防災施設社会基盤のままは不十分であることが危惧されている.一方で,河川に堆積した流木群は,魚類や底生生物の種多様性に貢献し微生物群集に生活基盤を与え,網状・蛇行河川においては多くの流木が河川内ではなく砂礫堆や氾濫原に堆積し,河畔植生の種多様性に貢献している.そこで,気候変動も考慮した流木流出統合モデルへの発展に向けて,時空間的に集中した豪雨の頻発による流木災害の多い中国南部を対象に流木流出統合モデルを適用・高度化するとともに,流出流木量の将来予測を行い,河川流域の生物多様性評価への応用を試みる.
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研究実績の概要 |
今年度は、気候変動も考慮した流木流出統合モデルへの高度化を完了し、河川生物多様性評価への応用に向けてモデルと検証データの整備を行なった。 モニタリング班は、共同研究対象地域である日本,中国含むアジア域を対象に衛星観測と機械学習を用いた斜面崩壊痕跡抽出モデルを開発し,この研究成果は,国際科学誌International Journal of Remote Sensingに掲載された.斜面崩壊モデルにおいては,降水量が日本より多い中国およびマレーシアの共同研究対象地域に対応するために,深層崩壊の崩壊特性に合わせた半球斜面安定解析モデルを新たに開発し,従来の浅層崩壊の崩壊特性に合わせた無限長斜面安定解析モデルと統合して高度化した.この研究成果は現在,国際科学誌に投稿中である.流木流出統合モデルにおいては,3種類の流木流出特性がある可能性を考え,モデルに3段タンクモデルを新たに構築し,従来の2段タンクモデルと統合して高度化した.日本全国212ダム貯水池流域に適用し,134流域(63%)で再現性が認められた.また,3段タンクモデルにて再現性が得られたダム貯水池流域は116流域(55%)であり,3種類の流木流出特性がある可能性が示唆された.この研究成果は, 国際科学誌Waterに掲載された. 生物多様性班は,モニタリング班で高度化した流木流出統合モデルと,HSI(Habitat Suitability Index)モデルを結合した.降水量データ,モデルパラメータおよび検証データを整備し,河川温度および河川環境に関して解析した.この研究成果は,国際科学誌WIREs Waterに掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,海外共同研究者を東北大学に招聘し,日本の対象流域である名取川流域にて,海外共同研究者と流木流出および生物多様性の合同現地調査を行った.高度化した流木流出統合モデルの適用試験に関しては,マレーシアの河川流域に適用する準備を進めている.これらの研究成果に関して,海外共同研究者と共同で国際共著論文の執筆を目指す。 モニタリング班は,斜面崩壊痕跡抽出モデルをマレーシアCameron高地に適用し,2008-2016年における斜面崩壊痕を抽出した.そして,高度化した斜面崩壊物理モデルを同地域に適用し,良好な予測結果が得られた.Covid-19パンデミックのために計画していた対象地域の中国の山地渓流での合同現地調査が実施困難となったため,ノッティンガム大学マレーシア校の海外協力研究者を加え,熱帯に位置し降水強度の大きいマレーシアでの流木流出統合モデルの適用可能性を検討した. 生物多様性班は、高度化した流木流出統合モデルを日本の対象流域である名取川流域を含む全国のダム流域に適用した.日本の対象流域である名取川流域,海外共同研究者がこれまでに生物多様性調査研究を実施してきたDove川流域にて,河川生物多様性評価の現地調査および検証データを整備して,河川温度および河川環境に関して解析を進めた.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,モニタリング班は,ノッティンガム大学マレーシア校もしくはイギリス校に渡航し,海外共同研究者とともに対象流域の流木流出および生物多様性の現地調査を行う.高度化した流木流出統合モデルの適用試験に関しては,マレーシアの河川流域に適用することを目指す.この研究成果に関して,海外共同研究者と共同で国際論文を執筆する. 生物多様性班は,流木流出統合モデルおよびHSIモデルを,英国の対象流域であるDove川流域に適用する.研究代表者の既往研究で用いた,地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF; http://www.miroc-gcm.jp/~pub/d4PDF/index.html)の将来予測値の確率降水量を用いて,名取川流域およびDove川流域における流出流木量およびその将来予測を行う.これらの研究成果に関して,海外共同研究者と共同で国際論文を執筆する.
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