研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
生物学的廃水処理プロセスにおいて、処理を担っている微生物の解明には、微生物の99%以上が培養できないなどの理由から、遺伝子情報を用いる方法が取り入れられている。本研究では、廃水処理汚泥中に普遍的に存在し、処理を担っている微生物群の代謝機能を、海外共同研究者と共にメタゲノム解析により明らかにする。再構築したゲノム情報から、生物反応プロセスのモデル化および生物反応制御技術開発に不可欠な廃水処理反応場における代謝に関わる微生物間のネットワークを明らかにする。
廃水処理汚泥のメタゲノム解析を継続して行った。サンプル数を合計5つに絞り、異なる複数のバイオインフォマティクスソフトを用いてビニングを行った。checkM1による完全性50%以上、コンタミネーション10%以下のビンとして、合計997ビンが得られた。これらのビンについてGTDBを用いた分子系統解析を行った。またサンプル間で構築されたビンの共通性および特異性についても解析を行っている。原核生物に加えて真核生物由来のビンを回収するために、真核生物由来のマーカー遺伝子を用いたスクリーニングを行い、その完全性から候補となるビンを回収した。また温室効果ガスを処理するバイオリアクターから回収した汚泥についても、その代謝を解明するための解析を行った。解析を行う前にリアクターを運転し、反応に関わると思われる微生物群を集積するとともに、微生物群による処理速度を求めた。微生物叢解析は、まずアンプリコンシーケンスを行ったところ、サンプル間、またリアクターの上下において若干の違いは見られたものの、植種した種汚泥および流入基質の微生物群集構造とは大きく異なる微生物群集構造が構築されていた。メタゲノム解析は処理ガス濃度4パターンにおいてリアクター上下二箇所から採取した8サンプルについてショートリードシーケンスを行った。温室効果ガスの処理に関わる遺伝子群について調べたところ、供給ガス濃度によって異なる微生物群が反応に関わっていることを示すデータが得られた。
2: おおむね順調に進展している
メタゲノム解析においては、多くの原核生物のビンが回収されたとともに、真核生物の候補ビンが回収されるなど順調に進捗している。またガス処理汚泥のメタゲノム解析においても処理に関わる微生物群の多様性を明らかにできつつある。
継続して海外共同研究チームとともに解析を行っていく。またガス処理の方はロングリードシーケンスを行い、より高品質なビンを獲得する。得られたデータについては学会発表や論文執筆を進めていく。
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