研究課題/領域番号 |
19KK0383
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
基盤・社会脳科学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山方 恒宏 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (50716248)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2023
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
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キーワード | 軸索起始部 / ドーパミン受容体 / 活動電位 / ドーパミン / 神経可塑性 / ショウジョウバエ / イオンチャネル |
研究開始時の研究の概要 |
軸索起始部(AIS)は、活動電位の発生部位として神経出力の決定に関わり、正常かつ可塑的な神経活動に必須である。その制御メカニズムを理解するため、AISにおけるドーパミン受容体の一種、DopEcRの作用機序を分子レベルで明らかにすることが本事業の目的である。そのためチャネルレベルのイオン電流の解析を可能とするパッチクランプ法を習得し、薬理学、遺伝学的手法と組み合わせ、活動電位の発生制御におけるDopEcRの機能を明らかにする。特に当該分子の活性に伴う局所イオン流の変化、関連するイオンチャネルを明らかにし、ドーパミンを介した活動電位制御、さらには細胞下レベルの神経可塑性メカニズムの理解に貢献する。
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研究実績の概要 |
軸索起始部(AIS)は、活動電位の発生部位として神経出力の決定に関わり、神経可塑性の起点となるだけでなく、その異常は神経疾患や精神疾患の原因になる。本課題は、AISの可塑性に関わる分子基盤を明らかにするため、特にドーパミン受容体の一種DopEcRに着目し、機能解析することを目的としている。
前年度までに確立した「巨大培養ニューロン」培養法(Wu et al., J Neurosci. 1990)および、その”軸索起始部”様領域に集積するDopEcRおよび電位感受性ナトリウムチャネル(NaV)を受け、パッチクランプ法による巨大培養ニューロンの細胞膜電流の測定を目指し、実験装置のセットアップおよび実験技術習得を進めてきた。その結果、一部の細胞膜上にパッチピペットのギガオームシールをつくることに成功し、刺激依存的なK+電流の計測に成功した。しかしその後、実験装置の不具合と実験結果の信頼性に疑義が生じ、当実験系の継続を断念せざるを得なかった。
代替案として、ハエの飛翔逃避行動に必要な巨大逃避ニューロン(Allen et al., J Comp Neurol, 1998; Dombrovski et al., Nature, 2023)の解析系においてDopEcRの機能解析を継続することにした。当実験系では、ハエ背部の飛翔筋電位計測を行うことで巨大逃避ニューロンの活動を1スパイクのレベルで容易かつ正確に知ることが可能である。また当系では、ハエ複眼への繰り返し電気刺激によって巨大逃避ニューロンに馴化を引き起こすことが可能である。興味深いことにDopEcRの欠損変異体のハエでは、この馴化が生じないことを見出し、軸索起始部が可塑的なスパイク発火のメカニズムに関わる生理学的なエビデンスを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
巨大培養ニューロンよりK+電流の計測に成功したことは大きな成果であったが、実験装置であるマイクロマニピュレーターやアンプの不具合が不運にも続き、安定的な実験結果が得られないことを理由に培養細胞からのパッチクランプ計測を断念せざるを得なかった。
その後、飛翔筋電位計測実験系に移行するための実験技術習得や実験系構築のために時間を要し、結果として当初の計画を遅らせる必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
飛翔筋電位計測実験系を用い、巨大逃避ニューロンの刺激馴化におけるDopEcR機能の理解を継続する。特に巨大逃避ニューロン特異的なGAL4遺伝子発現制御ドライバーを入手し、その軸索起始部の可視化とDopEcR局在、さらに細胞種特異的なDopEcR機能阻害を通じ、逃避の馴れにおける軸索起始部可塑性のメカニズムを明らかにする予定である。
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