研究課題/領域番号 |
19KK0397
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
熊倉 直祐 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (50815438)
|
研究期間 (年度) |
2021 – 2023
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
|
キーワード | アブラナ科炭疽病菌 / エフェクター / EV / 植物病原糸状菌 / 分泌 / 阻害剤 / Extracellular vesicle |
研究開始時の研究の概要 |
植物病原糸状菌はエフェクターと呼ばれる小分子分泌性タンパク 質を駆使することで感染を成立させる。近年、これらエフェクターがExtracellular vesicle(EV)を介して 分泌される可能性が示唆された。EVは細胞が分泌する膜小胞であり、シグナル分子 を運搬することで細胞間コミュニケーションを担うが、EV分泌に寄与するメカニズムは不明な点が多い。申請者はこれまでに、エフェクター分泌を阻害する複数の化合物を同定している。この化合物の中から、EV分泌を阻害するものを探索し、ケミカルバイオロジー的手法を用いて、植物病原糸状菌のEV分泌メカニズムを解明する。
|
研究実績の概要 |
植物病原糸状菌はエフェクターと呼ばれる小分子分泌性タンパク質を駆使することで感染を成立させる。近年、これらエフェクターがExtrace llular vesicle(EV)を介して 分泌される可能性が示唆された。EVは細胞が分泌する膜小胞であり、シグナル分子 を運搬することで細胞間コミ ュニケーションを担うが、EV分泌に寄与するメカニズムは不明な点が多い。申請者はこれまでに、エフェクター分泌を阻害する複数の化合物を同定している。申請者が基課題においてこれまで同定してきたエフェクター分泌阻害剤 の中に、EV分泌を標的にするものが含まれる可能性あった。そこで、Richard O'Connell博士と 共同研究により、申請者が持つエフェクター分泌阻害剤の中からEVの分泌を阻害するものをス クリーニングすることを本研究の第一の目的とした。さらに、訪問先研究者が持つ植物病原糸状菌の解析技術(感染細胞の電子顕微鏡観察、高効率な形質転換法)の習得及び新規技術の共同開発を第二の目的とした。第一の目的について、申請者が基課題で同定したエフェクター分泌阻害効果を持つ化合物について、EV分泌阻害効果を調べた。その結果、予想と反してエフェクター分泌阻害剤の中にEV阻害効果を持つものは検出できなかった。このことから、申請者の同定したエフェクター分泌阻害剤の作用標的が、O’Connell博士が同定したEVではない可能性が示唆された。第二の目的について大きな進捗が得られた。申請者がこれまでに確立したマーカーリサイクリング法及びCRISPR-Cas9を用いた多重遺伝子破壊法とO’Connell博士らのグループが持つ高効率な形質転換法を組み合わせ、アブラナ科炭疽病菌において高効率多重遺伝子破壊法の確立に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予想と反する結果を得たものの、訪問先研究者との共同研究による相乗効果が得られているため。具体的には、アブラナ科炭疽病菌において、高効率な多重遺伝子破壊法という新たな技術の開発に成功し、論文として国際誌に投稿中する進展が得られた。また、現在も共同研究により訪問先研究者の技術を利用することで、申請者が新たに同定した感染に必須な遺伝子の機能について新たなデータを得られているため。
|
今後の研究の推進方策 |
今回の共同研究において、炭疽病菌のEV分泌阻害剤スクリーニングでは、ヒット化合物が得られなかったものの、訪問先研究グループと協力関係を構築し、アブラナ科炭疽病菌の細胞生物学的手法と高効率な形質転換法を取得することができた。これらの手法を利用したアブラナ科炭疽病菌の高効率多重遺伝子破壊法の簡素化・高速化を引き続き推進する。また、これらの技術を活用することで、新たに炭疽病菌の感染に必須な遺伝子(申請者が同定)の機能を明らかにしつつあり、その成果発表・論文投稿を推進する。
|