研究課題/領域番号 |
19KK0409
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
細菌学(含真菌学)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
加藤 文紀 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (70452589)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
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キーワード | 黄色ブドウ球菌 / トキシン・アンチトキシン システム / 細胞死 / DNAジャイレース / 抗菌薬 / 蛍光タンパク質 / トキシン・アンチトキシン / 生育阻害 / DNAトポロジー / 感染症治療 / トキシン・アンチトキシンシステム / DNAトポイソメラーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
薬剤耐性黄色ブドウ球菌の蔓延は全世界的な公衆衛生上の問題となっており、新たな感染症治療薬の開発が必要とされている。細菌は自身の細胞死を制御するトキシン・アンチトキシン(TA)システムを有しており、申請者はDNAトポイソメラーゼを制御する黄色ブドウ球菌の新規なTAシステムをこれまでに見出している。本国際共同研究では、トキシンの作用機序を分子レベルで解明することにより、抗菌薬の新たな分子標的の候補探索を行う。さらに、黄色ブドウ球菌の新規TAシステムの機能を標的としたリード化合物の探索により、新規抗菌薬の開発研究を行う。
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研究実績の概要 |
黄色ブドウ球菌はヒトの常在菌でもあるが、多剤薬剤耐性菌の蔓延は全世界的な攻守衛生上の問題となっており、既存の抗菌薬の作用機序とは異なる新たな感染症治療薬・治療法の開発が必要となっている。ほぼ全ての細菌が保有するトキシン・アンチトキシン(TA)システムは、細菌自身の生存に必須な細胞機能を停止させることで細胞分裂の停止および細胞死を誘導するトキシンと、そのトキシン活性を中和するアンチトキシンから成る。本研究では、国際共同研究により、我々が見出した黄色ブドウ球菌のTAシステムであるTsbA/TsbTの作用機序・機能を利用した黄色ブドウ球菌の新規感染症治療薬の研究開発における飛躍的な発展を目指している。これまでの研究により、黄色ブドウ球菌のTAシステムであるTsbTトキシンはDNAトポイソメラーゼの一種であるDNAジャイレースの活性を阻害することを明らかにし、報告している (The FEBS Journal, 2023)。 当該年度は、TsbTトキシンにレポータータンパク質を融合させ、TsbTトキシンが機能する条件およびリード化合物探索のための実験系を構築した。この際、既存の赤色蛍光タンパク質3種および嫌気条件下で蛍光を発する蛍光タンパク質をコドン使用を黄色ブドウ球菌に最適化することで、高輝度で蛍光を発する黄色ブドウ球菌に特化した蛍光タンパク質を開発した。また、海外研究機関である米国・ニュージャージー州立CABM-ラトガース大学にて再度、4週間研究滞在し、TsbTトキシンによるDNAジャイレース活性阻害機構を詳細に解明するため、ターゲットであるDNAジャイレースタンパク質、またはTsbAアンチトキシンタンパク質とのタンパク質ータンパク質相互作用を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、TsbTトキシンと標的であるDNAジャイレースサブユニットおよび黄色ブドウ球菌細胞内でトキシンの中和活性を有するTsbAアンチトキシンとのタンパク質ータンパク質間相互作用をNative-PAGEを用いた解析により実施したが、現在までに明確な相互作用の検出に至っていない。今後、化学的な架橋実験等により分子相互作用解析をさらに進めることで、相互作用する領域を決定する予定である。また、黄色ブドウ球菌のTsbTトキシンにレポーターとして蛍光タンパク質を融合させ、TsbTトキシンタンパク質の転写解析及び分子間相互作用を解析を実施した。その際、既存の赤色蛍光タンパク質では蛍光輝度が弱く検出が困難であったため、赤色蛍光タンパク質3種および嫌気条件下で使用できる蛍光タンパク質のコドンを最適化する事で黄色ブドウ球菌細胞内での翻訳効率を改善させた。この研究成果については、現在論文投稿準備中である。これら改良型蛍光タンパク質を用いたレポーターアッセイにより、現在、解析を進めているが発現を誘導する生理的な条件およぶ低分子化合物を見出せておらず、さらなる解析が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画から遅れていることから補助事業期間を延長し、黄色ブドウ球菌細胞内におけるTsbTトキシンの標的であるDNAジャイレースをおよび中和活性を有するTsbAアンチトキシンとの分子間相互作用及び責任配列領域を、化学的な架橋法により架橋タンパク質相互作用解析をさらに進めることで決定する。また、本研究課題において開発したコドン使用を最適化した改良型蛍光タンパク質を用いてTsbTタンパク質の発現をレポーターアッセイにて解析することで、発現を誘導する生理的な条件およびTsbTトキシン活性を誘導する低分子リード化合物の探索を行う。これらの実験から得られる結果を元に、国際共同研究先においてバイオインフォマティクスによるDNAジャイレースの作用部位に対する化合物のデザイン・探索を行う。加えて、抗菌薬作用時のTAシステム遺伝子の発現パターン解析および遺伝子欠損株を用いて、TsbA/TsbTトキシン・アンチトキシンシステムの生理的な役割についても継続的に進める。
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