研究課題
特定領域研究
研究目的:自然免疫制御因子であり、その発現がメチル化で制御されるASC遺伝子の新規機能としてエネルギー代謝とオートファジーに伴う細胞死の制御と制御への関与が示唆され、この機序解明を目指す。このために、行った検討とその結果は以下のとおりである。1) ASC欠損平滑筋細胞ではオートファジーが頻度高く、ATP産生系が低下しており、その補償機能としてのAMPKの活性化を観察した。オートファジーが生存に必要か否かをその阻害剤3MA処理によって調べたところ、細胞生存数は低下した。オートファジーが生存に関与することは判明したが、高頻度に生じ易いのは、ASC欠損による直接の影響というより、ASC欠損によるエネルギー産生機能低下に起因すると考えられた。ASC欠損細胞のAMPKの活性をcompound Cで阻害すると、細胞生存は低下した。その時興味深い現象として、核内にASC野生型細胞に比べ大量に存在するp27^<kip>が細胞質に移行した。ASC依存的p27^<kip>発現制御と核内外の移動の可能性を考えたが、いずれもAMPKに依存し、ASCは関与するとしても間接的と考えられた。2) 平滑筋細胞を飢餓状態にしたとき、ASC欠損細胞は野生型に比べ生存し易いと示唆される結果を得ているが、この際のBc12ファミリーの関与を調べた。飢餓状態でのBc12とBax, Beclinとの比を調べると、野生型に比べ、Bc12の占める割合がASC欠損細胞で圧倒的に高く、これが細胞生存能を上げることに関与すると考えれたが、ASCがBc12発現に関わる機序解明は今後の課題である。3) ATP産生が低いASC欠損細胞にATPを添加すると細胞死が誘導された。従って、上記の諸現象の一番上流はATP産生制御にあるとも考えられ、ミトコンドリアとASCとの直接の相互作用を調べるべく、抗ASC抗体を用いて免疫沈降、質量分析器による解析を進め、数種の反応分子を同定した。しかし、まだエネルギー産生系に関わる分子との直接的反応は検出されておらず、今後の検討課題である。4) 癌細胞株の一部においては、ASC過剰発現によって増殖が抑制されることを見出した。この系においてのASCの作用点を解析し、上記の内容とも比較しつつ、ASCの細胞増殖、細胞死に関わる作用をASCと相互作用する分子の同定を介して明らかにすべく検討を継続中である。研究の重要性と意義:感染、炎症、細胞死制御という全てことに直接関わるASCに着目し、発癌や進展におけるその役割を解明する一環として行われている。感染、炎症、細胞死制御は発癌と進展においてきわめて重要な事柄であり、しかもASCがエピジェネティカルな発現制御を受ける点、その分子機序解明は癌形質の不安定性理解にもつながると期待している。
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