研究課題
特定領域研究
高等真核生物の初期発生における細胞周期の高速回転時において、DNA複製チェックポイントの中心分子であるp53の存在は危険である。つまり正常発生時に容易にDNA複製チェックポイントが活性化され、結果としてp53依存性アポトーシスが誘導される危険を伴う。それ故、初期発生においてはp53を不活化し、有害なアポトーシスを抑制する機構が存在するはずである。p53機能の制御については転写レベルや翻訳後修飾などの観点から研究が進んできたが、そのエピジェネティック制御については今までよく分かっていなかった。われわれはプロテオミクス解析により、クロマチンリモデリング因子Duplin/CHD8がp53に結合することを見出した。さらにCHD8はピストンH1とも結合し、p53/CHD8/ピストンH1三量体がDNA上に形成されることが明らかとなった。つまりCHD8が存在するとp53にヒストンH1がリクルートされ、クロマチン構造が変化してp53の転写活性化能は失われる。CHD8は発生初期に高発現し、成長に伴ってその発現は急速に低下するので、発生初期に重要な役割を果たしていることが示唆された。CHD8のノックアウトマウスは発生早期にアポトーシスの異常な亢進によりマウス胚が死亡する。このときp53も同時に欠損させるとこのアポトーシスは回避され、マウスは延命した。これらの遺伝学的証拠はCHD8が発生初期におけるp53の強力かつ生理的な抑制因子であることを示している。これらの結果より、初期発生においてCHD8はクロマチン上に結合しているp53すらも抑制できる強力な「抗p53最終機構」として、p53の暴走を防ぐことにより正常な発生を保証していると考えられた。
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Nature Cell Biol. 11
ページ: 172-182
http://www.bioreg,kyushu-u.ac.jp/saibou/index.html
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