研究概要 |
・GISTの多発転移により死亡した剖検31症例(imatinib未治療30例、imatinib治療後1例)および、GIST転移巣切除術2症例(imatinib, sunitinib治療後1例、imatinibm未治療1例)の併せて33症例152病変について組織形態学的な多様性およびKIT, CD34の発現について免疫組織化学的な検索を行った。KIT陰性転移巣については、分子標的治療薬のターゲットになりうる他のチロシンキナーゼ型レセプター(EGFR, PDGFRB, Met, Her2)発現の有無について追加検索を行った。さらにPDGFRB, EGFR陽性症例についてはFISHにより遺伝子増幅の有無、遺伝子変異解析を行った。 【結果】33症例154病変中、7症例15病変でKITの陰性化が見られ、組織像もGISTとしては非典型的な所見への変化を認めた。これらKIT陰性15病変のうち4症例7病変でPDGFRBの発現を、1例3病変でMETの発現を、1病変でPDGFRBとEGFRの同時発現を認めた。またKIT陰性PDGFRB陽性を示す症例の一部転移巣においてPDGFRB遺伝子exon 12のmissense point mutationを認めた。EGFRの変異はなく、FISH解析にてPDGFRB, EGFR遺伝子の増幅はみられなかった。 【考察】GISTの晩期転移・再発巣においては、imatinib未治療症例であっても一部の病変は形態学的な変化を伴ってKIT陰性化を示し、他のチロシンキナーゼ型レセプターの活性化が腫瘍の増殖に関与している可能性がある。この結果は、薬剤耐性の獲得を考慮してimatinib投与を遅らせることに意義はない事を示している。さらに、KIT陰性化したimatinib不応症例については、他のRTKs inhibitorの併用、変更が治療として有効な可能性がる。
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