研究概要 |
CAST/SAGE解析により食道癌・胃癌の特異的膜蛋白・分泌蛋白を同定し、診断の向上と治療抵抗性の克服に資することを目的した。 1) SAGE法による食道癌特異的遺伝子解析とその機能解析:昨年度にSAGE法で同定したADAMTS16は、増殖能・浸潤能を促進し、深達度との相関を明らかにした。また、その標的としてEGFおよびTGFαの可能性を検討した。SAGE法で発現低下遺伝子として、S100A9, EMP1, EEF1A1, TSPAN9などを同定した。 2) CAST法による胃癌特異的膜蛋白コード遺伝子の同定:胃癌で発現の亢進する14遺伝子(PCDHB9, ADAM17, TMEM50B, ENPP4, SLC38A2, DSC2など)を見いだした。DSC2は、CDX2で発現が制御され、腸型粘液形質を示す胃癌で発現しており、食道扁平上皮癌の殆どでも陽性を示した。さらに、スキルス胃癌を材料にCAST解析を進めている。 3) 胃癌におけるmicroRNA(miRNA)発現とその標的遺伝子解析:胃癌で発現が亢進しあるいは低下している35miRNAを同定した。組織型、進行度、予後と関連するmiRNAを見いだした。ホルマリン固定パラフィン包埋組織における発現についても確認した。miR-148aなどいくつかのmiRNAについては、TargetScanなどによる標的遺伝子の同定と機能解析を行なった。 4) 新規癌特異的遺伝子/蛋白とcancer stem cellとの関連:消化管stem cellマーカーOLFM4のcancer stem cellマーカーとしての可能性を独自に作成したモノクローナル抗体を用いて検討した。その陽性populationからは否定的であり、他のマーカー候補との組合せが必要と考えられた。 得られた成果は、新しい診断・治療開発につながるものと期待される。
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