研究概要 |
我々は上皮形態形成異常突然変異マウスRim3の原因遺伝子同定過程において、ゲノム進化上マウス・ラット分岐後にマウスのみで第11番、及び15番染色体上に重複化した新規遺伝子ファミリーGsdm(Gsdma cluster,Gsdmc cluster, Gsdmd)を見出した。本研究課題では重複遺伝子の遺伝子発現多様化、機能分化ガゲノム進化上如何に成立するのかを当該遺伝子群をモデルに解析した。遺伝子発現及び比較ゲノム解析の結果、1)Gsdma cluster, Gsdmc clusterはマウスにおける重複化後に組織特異的な遺伝子発現の細分化が起きたこと、2)これらマウスcluster遺伝子群は重複化と僞遺伝子化を繰り返している事、3)Gsdma cluster遺伝子の転写調節領域は、ヒトでは5^'上流0.5kb以内に存在するが、マウスでは~5kbにまたがって存在する事などを見出した。更にマウス、ラットには存在せず、ヒトには存在するGSDMBの発現パターンを調べた結果、1)GSDMBは多くの正常組織では発現していないが、前癌段階になると発現を開始し、癌組織では非常に強く発現すること、2)これらGSDMBの発現には2つの異なるプロモーターが使用されることが明らかとなった。GSDMBの転写調節領域の解析を行なったところ、この2つのプロモーターは共に5^'上流に挿入されたトランスポゾン配列(一方はAlu配列、もう一方はLTR配列)により形成された事が明らかとなった。次に当該遺伝子群の機能を解析する事を目的として、Gsdma cluster及びGsdmdの遺伝子欠損マウスを作成した。当初、Gsdma3はRim3の原因遺伝子として単離され、Rim3が上皮形態形成異常を示すことから、Gsdm遺伝子群の機能は上皮組織の細胞増殖・分化には関与したいだ。恒常性の維持に関わる可能性が考えられた。更に、Rim3を利用して、新たな扁平上皮癌自然発症モデルマウスの開発にも成功すると共に、機能ドメイン解析に利用可能な複数の新規Gsdma3点突然変異体を見出す事が出来た。
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