研究概要 |
コピー数多型解析においては1.3M CNアレイを用いて、HapMapサンプルのCEUおよびYRIの60 trio(180人)のデータの取得を行いさらに高精度なCNVの遺伝学的性質の解析を行った。プローブ間隔中央値765bpの解析では2人種集団において6184個のCNVが同定され、全ゲノムで224Mbp(0.08%)をカバーしていた。ゲノム上におけるサイズの中央値は12.7Kbpであり、500Kアレイを用いた解析(中央値31.4Kbp)に比較して精度の高い(細かい)解析結果が得られたと考えられる。新規のCNVが大部分を占める一方で、500Kアレイを用いた解析で得られたCNV領域は1.3M CNアレイを用いた解析ではほとんど検出することが可能であった。CEU, YRIの集団で5%以上の頻度をもつCNVがそれぞれ133個、187個が同定され、CYP4V2, CYP21A2など薬剤感受性の遺伝子で人種間によって大きな頻度差があるものが見つかった。この解析においてはマイクロアレイにおいてdiploidのコピー数として検出されるデータから、ハプロイドごとの構成を推定するアルゴリズムを開発し、CNVのアレルと周囲のSNPとの連鎖不均衡の関係の詳細な解析を行った。Bi-allelic CNVを全体としてみるとtri-allelic CNVの法が周囲のSNPとより強い連鎖不均衡の状態にあった。Bi-allelic CNVにおいてdeletion alleleの頻度によって周囲のSNPとの連鎖不均衡が強く相関していることが分かった。こうしたcommon deletion alleleは周辺のSNPによってtagが可能であるが、これらを含めてSNPによってtag可能なCNVは全体でわずかであり、大部分のCNVは直接コピー数を測定する必要があることが判明した。 癌解析においては肝転移を認めた大腸癌症例19例及び肝転移のない大腸癌14症例について、SNPアレイを用いたゲノムワイド遺伝子コピー数解析を行った。肝転移の有無に関わらず14の染色体腕で増加や欠失が見られた一方、肝転移群では20p13-p12.1、20q11.21-q13.33の染色体増加と、6q14.1-q25.1のヘテロ接合性消失(LOH)が高頻度に見られた。また、同一症例の原発大腸癌と肝転移癌組織の染色体異常を比較したところ、大部分は共通の染色体異常が維持されていたが、原発巣のみで見られる遺伝子コピー数変異もしばしば見つかったことから、癌細胞の不均質性に由来すると考えられた。 また大脳半球の分離不全を伴う先天疾患である全前脳症(HPE)の解析も行った。これまでSHH, SIX3などの神経発生にかかわる遺伝子の変異などが見つかっているが、これらの遺伝子に変異が見つからず原因がはっきりしないものも多い。既知の原因遺伝子に変異の見られないHPEの症例について、1.3M_CNアレイを用いて高密度のゲノムコピー数解析を行ったところ6q22.31-q23.2の領域にっいて10.4Mbpの大きな欠失が同定された。このアレイは中央値765bpでプローブが配置されているために切断点(break point)の正確な評価が可能であり、切断点にまたがる遺伝子EYA4を同定した。EYA4はHPEの既知の原因である転写因子SIX3に共役因子として結合し前脳の発生に関わることを示すことが可能であった
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