研究概要 |
時間や空間についての認知が脳内でどのような神経過程で行われているかについて実験的,理論的研究を行っているが,平成21年度は,これら当初とは異なる方向に大きな発展があり,特に以下の3件について成果が出た.(1)脳内スパイク信号の不規則性パターンが大脳皮質領野によって異なり,それが運動,感覚,連合などの機能と強く相関していることが明らかになった.神経スパイク信号の不規則性のもつ機能的意義については,未だわかっておらず,今後は神経コーディングの大きなテーマになっていくものと期待している.(2)神経細胞のスパイク生成を定量的にモデル化することに成功した.これまでも神経データ予測の国際コンペティションでは優勝を果たしてきたが,本年度も我々のグループからコンペティションに応募した小林亮太氏(昨年度博士課程3年,今年度より立命館大学助教)が総合優勝を果たしINCF Awardを受賞した.今後も新しいモデルを開発してさらに推定精度を高める方向で検討している.(3)神経スパイク時系列のレート推定においてよく用いられるカーネル法のカーネルバンド幅を最適化する理論を確立し,そのための最適化アルゴリズムを提案した.採用した最適化の基準は,データが生成される背後のレートと推定カーネルの二乗誤差を最小化するというものである.ここでは背後のレートはわからなくても,データが時間変動ポアソン過程から生成されたという仮定によってデータのみから二乗誤差を最小化するアルゴリズムを作成することができた.ここで仮定したポアソン性は,繰り返した試行数が多ければ多いほど近似度がよいと期待される現実性のあるものである.
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