研究課題
特定領域研究
本研究では、数理モデル構築による「価値意思決定]の脳機能の研究と、細胞集団活動の数理的理解(情報処理の解明)の研究を並行して行った。以下、本年度の二つの主要結果を報告する。(1) 価値意思決定における脳内時間を反映する強化学習モデル近年、強化学習を理論的基盤として「価値に基づく意思決定」(価値意思決定)の脳機能の理解が急速に進んだ。今後の進展には、より優れた理論の構築が必要と考え、我々は、実験の観測が使う時間(通常時間)と区別して、脳内の時間過程(内部時間)に基づく強化学習理論を構築した。これにより、脳の内部時間を直接モデル化の対象にする新しい強化学習理論を提案できた。例えば、観測者・実行者の各々の立場により、「ドーパミン神経細胞の報酬予測誤差信号が異なる信号となる」、また「時間割引課題などで異なる合理性が存在する」ことを示した。(2) 多電極同時記録のデータ解析:高次相互作用を繰込んだ階層モデル多電極の同時発火活動について、近年、相次いで、網膜神経細胞活動や、大脳皮質神経細胞活動または局所電位活動(negative LFP peak activity ; nLFP)で、2次相関までで同時発火の相互作用の記述には十分という解析結果が報告された。我々の研究は、これらに対して2つのもっと基本的な疑問――「相互作用の適切な“単位"とは?」「対象の神経回路に応じて、より簡便なモデルがあるのでは?」――から出発した。大脳皮質のnLFPデータの解析から、階層的な“単位"を用いる2次相関モデルが、より正確かつ簡便にnLFPの相互作用を記述でき、ロングレンジの相関を捉えることを発見した。このモデルは、実は高次相関を含むモデルであり、通常の2次相関モデルよりは、より小さくかつ簡便なモデルである。より広い文脈では、この研究は各神経回路に対応させてモデル構成を行う新手法を提案している。
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http://www.itn.brain.riken.jp