研究課題
特定領域研究
舌下神経前位核(prepositus hypoglossi nucleus, PHN)は水平性の眼球運動に関与しており、脳幹から入力する速度信号を位置信号へ変換する役割があることが示されている。本研究では、舌下神経前位核における速度-位置変換機構にどのような神経回路特性が関与しているのかを調べることを目的としている。ラットの脳幹スライス標本を作製し、抑制性神経伝達を遮断した状態でPHNニューロンからホールセル記録を行ない、ニューロンの近傍に微小ガラス管により一過性のバースト刺激(100Hz、20パルス)を与えたところ、自発性EPSCの頻度が刺激前に比べ増大し、それが数秒間持続される現象を見出した。この現象は一過性の速度信号から持続的な位置信号への変換過程を反映することから、持続的なEPSC頻度増加を担うシナプス伝達について薬理学的に調べた結果、カルシウム透過型AMPA受容体の活性化が重要であることが明らかになった。そこで、カルシウム透過型AMPA受容体をもつニューロンが実際にPHN内に存在するのかを調べるために、記録しているPHNニューロンにカイニン酸を電気泳動により投与し、膜電位を-60mVと+40mVに保持したときの電流応答比(Rectification Index, RI)を求めた。カルシウム透過型AMPA受容体を持つニューロンのRI値は1以下であることが知られており、解析の結果、半数以上のPHNニューロンにおいてRI値が1以下であった。さらに、ナトリウムを含まずカルシウム濃度を高くした細胞外液中で、PHNニューロンのカイニン酸投与に対する電流応答を調べたところ、RI値が1以下であるニューロンは1以上であるニューロンに比べ、カルシウム透過性が高いことが確認された。以上の結果から、カルシウム透過型AMPA受容体をもつPHNニューロンが速度-位置変換に重要な役割を持つことが示唆された。
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Neuroscience 164
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