研究課題
特定領域研究
プロスタグランジン(PG)類の生体作用は、アスピリンの標的として発熱などの中枢作用がよく認識されているにも関わらず、いまだ全く新しい機能が隠され、既知作用についてもその分子機構は不明であった。そこで本研究では、アミロイドβ蓄積や性特異的ネットワーク形成に関わるPG受容体に着目し、PG作用発現の分子機構の解明を試みた。以下に21年度の成果を示す。1. PGE2-EP4シグナルによるアミロイド-β蓄積機構…EP4受容体活性化によるアミロイド-βの蓄積は、エンドサイトーシス阻害剤により阻害された。またEP4受容体作動薬はY-セクレターゼを活性化すること、EP4受容体は活性化によりインターナリゼーションを受けること、C末端を欠失させたEP4受容体はインターナリゼーションを示さず、また同時にY-セクレターゼ活性化やアミロイド-β蓄積能を示さなかった。また免疫沈降法により、EP4受容体は、Rab7(エンドソームマーカー)とともにY-セクレターゼの触媒サブユニットであるPS-1と共沈降されること、この三者複合体は野生型マウス脳でも認められたが、EP4受容体欠損型では見られなかった。従って、EP4受容体は、活性化に伴うエンドサイトーシスによりPS-1とともにendosomeに移行し、Y-セクレターゼを活性化することでアミロイド-β蓄積を促進する可能性を示した。2. 脳の性特異的な神経ネットワーク形成機構…脳の性特異的なネットワーク形成と性行動発現におけるプロスタノイドの役割を明らかにするため、8種類の受容体欠損マウスの性行動を解析した。その結果、ある種のEP受容体シグナルはマウス脳の性分化(オス化)に必須の役割を果たすことを見出した。また視索前野ニユーロンのフィロポディア密度と神経突起長に対して、PGE2、EP受容体作動薬、膜透過性cAMPは促進し、インドメタシン、EP受容体遮断薬、EP欠損は阻害した。従って、PGE2-EP受容体はcAMP依存的に視索前野ニユーロンの突起伸長とフィロポディア形成をともに促進することでオス特異的な神経ネットワ-クを形成する可能性を示唆した。
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