研究概要 |
これまでに私どもはPSD-95パルミトイル化脂質修飾酵素P-PATファミリー(DHHC2, 3, 7, 15)がAMPA受容体の機能を制御することを見出した。本研究ではこれまでの結果をさらに発展させ、1)神経活動依存的にP-PAT機能を制御する情報伝達機構、および2)P-PATの生理機能を明らかにし、P-PATによるAMPA受容体の動態制御機構の解明を目指す。本年度の研究実績は以下のとおりである。 4種類のP-PATのうち海馬ではDHHC2およびDHHC3の発現が高く主要な働きを果たしていることを見出した。興味深いことに、DHHC3は細胞体のゴルジ装置に限局しているが、DHHC2は樹状突起内にも存在し、神経活動感受的にシナプス近くに素早く移動することが分かった。さらに、神経活動抑制下では、AMPA受容体のシナプス発現量が上昇することが知られているが、DHHC2のRNA干渉実験の結果、DHHC2によるPSD-95のパルミトイル化が、神経活動抑制によって誘導されるAMPA受容体のシナプス後膜への集積(AMPA受容体恒常性維持)に必須であった(Noritake et al. J. Cell Biol. 2009)。以上の知見は、パルミトイル化酵素ファミリー分子の局在多様性が、極性化した神経細胞における基質蛋白質の局在を巧妙に制御していることを示唆する。これらの成果は世界的にも高く評価され、総説(深田らNature Rev. Neuroscience, 2010)にまとめられた。さらに、私どもは、生細胞で内在性PSD-95のパルミトイル化動態を可視化することを目的として、パルミトイル化PSD-95を特異的に検出するprobeの作成に成功した。このように今年度の研究計画は達成できたと考えている。
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