研究課題
特定領域研究
統合失調症の病態にはジェネティックな機序とエピジェネティックな機序が複雑にからんでいると推測される。環境要因による影響の一部はエピジェネティックな機序を通じて統合失調症の発症に関わっていることが推測される。この機序には遺伝的多様性も関係している可能性がある。本研究は統合失調症の関連遺伝子であり、エピジェネティックな機序に関係するSMARCA2遺伝子の統合失調症の病態を解明することを目指した。Smarca2ノックアウトマウス、7週齢~18週齢の雄、一部は4週齢の雄を用いた。研究は筑波大学および共同研究機関のヒトゲノム・遺伝子解析研究のための倫理委員会および筑波大学動物実験委員会の承認を受けて行われた。統合失調症に対するSMARCA2遺伝子のリスクアレルは機能減弱型であることが明らかとなっていた。細胞およびマウスでSMARCA2(Smarca2)をノックダウンすることによる他の遺伝子の発現変化が統合失調症の死後脳で報告されている遺伝子発現変化と有意に正の相関が見られた。このことから、SMARCA2遺伝子のノックアウトマウスはヒトの統合失調症モデルとして有用であると推測された。Smarca2ノックアウトマウスの行動解析では、社会交互作用(Social Interaction)テストにおいて、有意にマウスの接触の頻度が少なく、プレパルス抑制テストでプレパルスによる驚愕反応の抑制が減弱していた。さらにヘテロノックアウトおよびホモノックアウトマウスでは、MK-801による誘発行動量の増加が乏しく、また、音に対する驚愕反応の低減も見られなかった。本研究により本研究はクロマチンリモデリングに関わる分子も統合失調症の鍵分子の可能性があることが明らかとなった。
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