研究課題
特定領域研究
超流動ヘリウム3では、ギャップエネルギーΔ以下に有限の表面準粒子状態密度が存在するが、これがアンドレーエフ束縛状態である。壁の鏡面度Sを大きくするにしたがい、この束縛状態バンドのバンド幅Δ^*が広がり、ゼロエネルギーの表面状態密度が減少すると予測されていた。S=1の極限では、表面状態密度はエネルギーに比例して増加する。このエネルギーに対する線形の依存性は、表面準粒子の分散関係が運動量に線形に依存することと等価であり、S=1でマヨラナコーンが存在することを意味する。我々はSが大きくなると、低エネルギーで新たなピークが現れることを見出した。またバンド幅が増大し、大きなSの領域でギャップレスとなることを確かめた。理論との比較により、この低エネルギーピークは、ゼロエネルギーの表面状態密度が減少することによって現れることが明らかとなった。観測されたSの増加による低エネルギーピークの成長は、ゼロエネルギーの表面状態密度が減少し、マヨラナコーンへと漸近する振る舞いであることを示した。S=1の極限で現れると予測されているマヨラナコーンの存在を強く支持する実験結果である。これまでマヨラナフェルミオンを観測したという明確な結果が無い中で、超流動ヘリウム3の表面マヨラナフェルミオンの存在を示す結果は大きな意味を持つ結果と考えられる。また11Tまでの高磁場でのインピーダンス測定から、A1相とA2相の温度変化が大きく異なり、弱結合の理論的振る舞いからずれることを見出した。強結合効果を取り入れた理論の進展が望まれる。
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