研究概要 |
[1]多自由度相関系におけるスピン分極軌道状態:ペロフスカイト型チタン酸化物RTio3(R=La,Y等)では、ホール・ドーピングによる金属絶縁体転移や相境界近傍の異常金属状態に多くの興味がもたれている。特にスピンが分極した状態の軌道状態については、軌道自由度がもつ高い対称性のために新規な軌道状態が期待されている。我々は強磁場下や強磁性状態においてスピンが完全に分極したt_^<2g>軌道模型について、量子モンテカルロ法を用いた数値計算を行うことで有限温度の軌道状態について解析を行った。感受率の温度変化や軌道一重項相関関数の解析から、低温でギャップを持った軌道状態が実現している可能性を指摘した。 [2]スピン自由度を有する強相関系におけるスピン転移と相分離:ペロフスカイト型コバルト酸化物R_<1-x>A_xCo0_3はそのコバルトイオンにおいてスピン状態の自由度とそれらの間の転移を示す物質として多くの実験、理論研究がなされている。Co^<3+>では(t_<2g>)^6の低スピン状態(LS)、(t_<2g>)^5(e_g)^1の中間スピン状態(IS)ならびに(t_<2g>)^4(e_g)^2の高スピン状態(HS)の3つのスピン状態を取ることが可能である。La_<1-x>Sr_xCo0_3のx=0の低温ではLS状態が、x>0.25でHS強磁性金属状態が実現する。その中間のキャリアー濃度でスピングラスや相分離状態が小角中性子散乱やNMR等により見出されている。我々は多軌道ハバード模型におけるスピン転移と相分離について理論的に解析を行った。変分モンテカルロ法を用いた解析の結果、x=0でLSバンド絶縁体が実現するパラメータ領域においてキャリアーを導入すると、高ホール濃度領域でHS強磁性状態が実現すること、またその中間領域で相分離状態のエネルギーが一様状態のそれより低くなることを見出した。また磁化のキャリアー濃度依存性が単純なrigidバンド模型から予想されるそれより顕著であることが明らかとなり、これは実験結果とコンシステントであることが見出された。この相分離はLSバンド絶縁体とHS強磁性金属との共存状態であり、AバンドとBバンドのバンド幅が異なることに起因する。このような状態に磁場を印加することでスピン自由度間相分離を起こすホール濃度領域が減少することを見出した。
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