研究概要 |
本研究では,30Tまでの強磁場下でMFE probeを用いて,(1)イオン液体のドメイン構造,(2)光フリース転移反応の反応機構,(3)チオベンゾフェノンの光化学初期過程の解明を行った。こうした研究では,幅広い磁場領域の測定が不可欠であり,化学反応研究用の強磁場の開発が重要である。そこで,(4)ビッター型パルスマグネットの改良,(5)50T級巻き線型水冷パルスマグネットの開発を行った。 具体的には,(1)イオン液体中には,半径は2nm程度のドメイン(ケージ)構造があることが示唆された。特筆すべき点はその内部のミクロ粘性が,マクロ粘性に比べて遥かに小さく1~2cPである。さらに,ケージの寿命は少なくとも160nsより長くないことがわかった。(2)酢酸1-ナフチルの光フリース転移反応における鍵中間体は,シクロヘキサジエノンではなく,ラジカル対錯体であることを明らかにした。(3)ベンゾフェノンの硫黄類似体であるチオベンゾフェノン(TBP)について,SDSミセル溶液やイオン液体中で反応性を検討し,本反応系がMFE probeの新しいプローブ反応として適用できることを見いだした。(4)ビッター型水冷パルスマグネットの改良を行い,ボアの直径を20mmにすることで発生磁場を増加させることに成功した。(5) 50T級巻き線型水冷パルスマグネットの開発を開始したが,強度と冷却水の流路の問題で,残念ながら完成に至らなかった。
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