研究概要 |
昨年度は潤滑剤用途に適するイオン液体の分子構造トライボロジー特性の関係を調査し,疎水性アニオンから成るイオン液体が優れることを報告した.疎水性アニオンにはフッ素を含む物が多く,摩擦条件下では摩擦材とフッ素が反応して腐食摩耗の原因となる.今年度はフッ素を含まないイオン液体の評価を行い,あわせて摩擦特性を向上する添加剤を検討した. 1,3-ジアルキルイミダゾリウムおよびN,N-ジアルキルピロリジニウムカチオンとテトラシアノホウ素アニオンから成るイオン液体を試料とし,ボールー平板式往復動試験機で試験中の摩擦係数と試験後の摩耗痕径を計測してトライボロジー特性を評価した.参照試料として特定領域標準試料である1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドと比較して,上記ハロゲンを含まないイオン液体は腐食摩耗をほとんど示さなかった.特にピロリジニウム塩は原稿の実用油と比較して遜色のない耐摩耗性を示した.しかし摩擦係数が高いので改善が必要であった.テトラアルキルホスホニウムジアルキルリン酸塩はハロゲンを含まない物質であり,上記のテトラシアノホウ素誘導体のイオン液体によし溶解した.このリン酸塩を添加剤として加えるとテトラシアノホウ素イオン液体の摩擦特性が向上した.本研究では潤滑剤組成のトレンドである「脱ハロゲン化」に沿ってフッ素を含まないイオン液体を検討した.長時間試験による安定性評価や摩擦低減剤の最適化などの課題は残るものの非ハロゲンイオン液体が潤滑油基油として有力な候補であることを明示した.
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