研究概要 |
アルキル鎖を持つイミダゾリウム塩【C_n mim】X(nは炭素数Xはハロゲン)は、アルキル鎖の長さが増すと界面活性剤としての性質が際立ってくる。n>6でミセル形成が観測されており、臨界ミセル濃度(cmc)はnと伴に低濃度側にシフトする。一方、同じ炭素数でアニオン種を変えた場合cmcはほとんど変わらないが、アニオン半径が大きくなるとミセル中の会合体数も多くなることが報告されている。水溶液中では、アルキル鎖同士の疎水性相互作用、カチオンとアニオンの静電相互作用、アニオンと水の水和が競合してミセル会合体を形成する。このような相互作用の寄与を分離するためには、水溶液中のミセルではなく共存する水溶液表面の分子膜の構造に着目したほうが良いと考え、本研究ではX線反射率測定を試みた。 その結果、臨界ミセル濃度付近の【C_n mim】X(n=8,12、X=Cl,Br)水溶液はアルキル鎖のパッキングが50%で、アニオンがイミダゾリウム環の隣に配置した表面単分子膜を形成していることがわかった。[C_12mim】Cl水溶液の場合は、濃度の増加に伴って、Crのポジションが表面近くに移動すること、[C_8mim]X水溶液の場合は、Br^-の方が表面に近く位置していることを考えると、アニオンのポジションはイミダゾリウム環の静電相互作用が最も支配的であるが、水和の影響をわずかに受けることがわかった。 一方、反射率測定の際に得られる散漫散乱強度を検討したところ、上の表面単分子膜が面内方向に非常に均一な膜であることがわかった。
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