研究概要 |
本研究では,脳内における自己と他者の身体の認識のメカニズムと、頭頂連合野と運動前野のネットワークの役割を明らかにすることが目的である.これらのいずれも、このネットワークの中で、モダリティの異なる感覚フィードバックと運動のシグナルのコピーである遠心性コピーの統合のメカニズムを探る事が重要となる。本年は、また,電気通信大学の阪口准教授らの主導のもとで共同研究を行い,頭頂葉のAIP野活動のデータを用いて情報量解析を行った.その結果,ニューロンのタイプによって,情報量のピークが異なる時間に現れることが明らかになった.AIP野では物体の情報に関するピークが、早い段階で現れ、物体の情報は早くから処理されていることがわかった。また、運動のシグナルをコードする運動優位型は、視覚優位型や視覚運動型のニューロンと比較して情報量の立ち上がりが早く、運動優位型は、運動前野からの遠心性コピーであるというこれまでの考えを支持する結果であった。この結果は、現在Exprimental Brain Researchに投稿中である。また現在、視覚フィードバックと遠心性コピーの統合に関わるニューロンを頭頂葉と運動前野で記録すべく、サルの訓練がほぼ完了した。我々は,自己の身体と他者の身体は共通の領域で表現されているのではないかと推測し、昨年頭頂葉のVIP野の多種感覚ニューロンが,自己の身体だけでなく,他者の身体をコードしているかどうか調べた.その結果,自己の身体部位をコードすると考えられるニューロンが,他者の同一の身体部位上に鏡像関係に視覚受容野を持つニューロンが見つかったが、脳が他者身体を自己の身体を参照して知覚している可能性が示唆する.この結果は、2010年1月にJ. Cog. Neuroscienceに掲載された。
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