研究概要 |
我々はポロゲン抽出による足場造形法を用いて作製した多孔質人工血管足場の再生医療への応用に関する研究を行っている.以下,それぞれの研究成果について述べる. 1. 複雑形状人工血管足場上全表面でのヒト血管内皮細胞の培養 内壁・外壁において孔密度に傾斜を有するY字形状人工血管足場(ポロゲンとしての塩微粒子溶出法を用いて作製)上へのヒト血管内皮細胞の全表面への回転播種システムを構築した.この回転播種システムは,2軸のステッピングモーターにより,Y字足場の全表面が底面となるような回転をする.本デバイスにより,ヒト血管内皮細胞の複雑足場全表面への接着を実現した. 次に,同足場に接着したヒト血管内皮細胞の成長を促すための循環型システムを構築した.同循環型培養システムによる培養液循環型培養により、ヒト血管内皮細胞が接着した足場の静置培養と比較し,多数のヒト血管内皮細胞の足場への接着維持が実現された.同循環培養システムは,テーラーメイド人工血管足場内でのヒト内皮細胞の培養において有効である事を確認している. 2. 生体内毛細血管系を模倣したバイオリアクターの構築 マイクロスケールの流路の一部壁面にシート状人工血管足場を組み込み,生体内血管系の環境(流れによるせん断応力,圧力)を模倣したバイオリアクターを構築した.シート状足場部にあらかじめヒト血管内皮細胞,血球系細胞を播種した後,培養液循環型培養と評価を行った.この結果,構築したバイオリアクターによれば,生体内と同程度の活発な細胞間相互作用を再現できる事を確認した.同バイオリアクターは,生体内毛細血管と同様の環境下での細胞共培養が可能であり,生理学的研究へのシーズとして有効である.
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