研究概要 |
人工細胞モデル構築のための膜蛋白質複合システム機能の統合的再構成法の確立をめざし,まず基幹的シグナル伝達経路である『G蛋白質共役型受容体(GPCR)/促進性3量体G蛋白質(Gs)/アデニル酸シクラーゼ(ADCY)経路』に与る膜蛋白質群機能を巨大リポソーム(Giant Unilamellar Vesicle ; GUV)膜へ再構成することを目標として,研究した。そして,バキュロウイルス/昆虫細胞遺伝子発現系とそれによって得た組換え膜蛋白質要素搭載出芽ウイルス(BV)とGUVとの膜融合を利用して経路因子を組み込む,巨大プロテオリポソーム作製法をほぼ確立できた。具体的には次の通りである。前年度まではGUVと共沈する画分中で,上記因子を抗体検出しその組込み確認していた。本年度は各膜蛋白質に特異的に結合する蛍光標識リガンド(ホルモンなど)でGUV膜を可視化した。これにより本手法でリポソーム膜に組み込まれた膜蛋白質の機能保持が強く示唆された。さらに経路機能の発現をGUV内でのcAMP産生により検出した。当初,顕微鏡による直接可視化を試みたが困難であったため,GUVの特性を活かしたスピンダウンアッセイを開発した。このアッセイでは,ADCYの基質類を封入したGUVを,各因子を含むBVと融合させた後,穏やかな遠心で巨大プロテオリポソームのみ回収,一定時間cAMP合成反応をさせてから副産物のピロリン酸量を測定する。その結果,GUV上で,Forskolin, SQ22536によるADCYの特異的活性亢進,阻害をそれぞれ検出した。さらにGs/ADCYを組み込んだGUVでも,GTP, GTPγSによるADCYの特異的活性化を実現し,経路の一部が繋がった。本手法は形質膜上の膜蛋白質一般への適用が可能と期待されることから,本研究により膜蛋白質複合システム機能再構成の汎用手法が確立できたと言える。
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