研究概要 |
本研究の目的は,顕微鏡下の細胞操作に代表されるマイクロマニピュレーションにおいて,操作性を向上させることである.昨年度開発したシステムでは,身体像の錯覚現象からヒントを得て,操作ツールと物体との接触に伴い触・聴覚情報を呈示することにより,高い没入感を生むマイクロマニピュレーションシステムを開発した.今年度は,操作自由度の増加により,操作性を向上させた.具体的には,操作者の吸込み/吹出しによる空気の流量を計測し,それに伴い操作ツールであるマイクロ管の先端に空気の流れを生じさせるマイクロマニピュレーションシステムを開発した.マイクロ管の場合,流体抵抗は極めて大きく,操作者による空気の流れを,直接マイクロ管に繋げても,マイクロ管の先に空気の流れを生じさせることはできない.そこで,バルブを介してマイクロ管を正圧源(コンプレッサ)と負圧源(真空ポンプ)に繋ぎ,操作者による空気の流量に応じてバルブを開閉することにより,吸込み/吹出しのマスタ・スレーブシステムを実現した.バルブの開閉にPWMを利用することで,滑らかなマイクロマニピュレーションの実現に成功している.このシステムでは,自由度の増加のみならず,操作者の吸う・吹くの動作に伴って触・聴覚情報を呈示することにより,あたかもストローを介した吸込み/吹出しによって物体を操作するような感覚で,顕微鏡下の微小物体を操作することができる.このシステムによって,30マイクロメートル程度の微小物体を吸い付けて把持し,吹出しによりリリースすることができることを確認した.
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