研究概要 |
1) インジェクタブルポリマーの大スケール合成と物性評価 前年度までに設計したインジェクタブルポリマー,8-arm PEG-PLA-chol(マルチアーム型ポリエチレングリコール(8-arm PEG)を親水性セグメント,ポリ乳酸(PLA)を疎水性セグメントとし,末端にコレステロール基を導入したブロック共重合体),PLA-g-PEG(側鎖にカルボキシル基を有するポリ乳酸デプシペプチドランダム共重合体側鎖にPEGを結合させたグラフト共重合体)を大量合成した。ポリ乳酸(PLA)セグメントの立体規則性の影響を調べるために,ポリ(L-乳酸)(PLLA)およびポリ(DL-乳)(PDLLA)を用いたものの両方を作成し,そのゾルーゲル転移挙動,ゲル状態での力学的特性,生理的条件下での分解性などを検討した。その結果,いずれの場合においても,ポリ(DL-乳酸)(PDLLA)を用いたものの方が好ましい温度でのゾルーゲル転移挙動を示すことが明らかとなった。 2) インジェクタブルボリマー内部への細胞浸透試験 再生医療への応用を意図して,体内注入後の周辺組織からの細胞浸潤機能を評価することを目的として実験を行った。最適な評価システム(観察に適したゲル作成容器の作成など)の確立に時間を要したが,合成したインジェクタブルポリマーから作成したゲルの上部に各種細胞を播種し,細胞がゲル内部へ浸透していく様子を断面の光学顕微鏡観察などから検討した。その結果,ゲル内部へのマウス繊維芽細胞(L929)の浸潤が観測され,本実験で作成したインジェクタブル・ゲルは再生医療用足場材料としての機能を有していることが示唆された。
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