研究概要 |
3つのm-テルフェニル基を有する半球型ホスフィン(BSP)はナノサイズ触媒環境を構築するには最適の配位子である。本年度は,銅触媒を用いたヒドロシリル化反応にBSPを適用した。銅触媒を用いたヒドロシリル化反応において活性種とされる銅ヒドリドは、凝集によって反応性が低下することが多い。BSPの半球型の構造を利用すれば、反応場が十分にある低凝集の高活性な銅ヒドリドを発生させることができるのではないかと考えた。また、基質としてはヒドロシリル化反応が困難であるかさ高いケトンを選択した。まず,立体障害の異なる基質を用いて競争反応を行った。その結果、銅-BSP3触媒はかさ高いケトンを高い選択性で還元できることが分かった。この選択的還元は脂肪族および芳香族ケトンのどちらにも適応可能であった。同様の条件でトリフェニルホスフィンを用いた場合には立体障害の小さいケトンが優先的に還元された。また、立体障害の異なるアルデヒドを用いた場合にもかさ高いアルデヒドが選択的に還元されることが分かった。さらに,ケトンよりも立体障害の小さいアルデヒドを用いてかさ高いケトンとアルデヒドの競争反応を行った。その結果、驚くべきことにBSP3を有する銅触媒はアルデヒド共存下においてもかさ高いケトンを優先して還元できることが分かった。本反応においては、かさ高いケトン由来の銅アルコキシドはBSPと大きなアルコキシドとの立体反発のために凝集が抑えられ、高い活性を示すと考えられる。一方で、基質の立体障害が小さい場合にはその銅アルコキシドは凝集により,その活性は低下するであろう。
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