研究概要 |
本研究ではシアナート(R-O-C≡N)のO-CN結合切断について検討を行った。まず、シアナートと当量のシリル錯体(Cp(CO)_2FeSiEt_3)のトルエン溶液を作成し、光照射を行ったところ、39%の収率でEt_3SiCNが生成していることが明らかとなった。そこで次に鉄およびモリブデンのメチル錯体であるCp(CO)_nMMe(M;Fe, n=2;M=Mo, n=3)およびその誘導体と当量のヒドロシランとシアナートを添加して反応を検討した。その結果、Cp(CO)_3MoMeを用いてトルエン中加熱を行った場合に最も高い活性を示すことが分かった。この反応を触媒反応へと展開した。反応条件を種々検討した結果、溶媒としてDMFを用い、100℃で加熱すると効率良く触媒反応が進行することが分かった。この触媒条件で種々のシアナートについて検討したところ、アルキルシアナート、アリールシアナートいずれの場合もO-CN結合が切断され、さらに電子供与性置換基をもっているものほど効率良く切断が起こることが分かった。予想される触媒反応機構についての考察も行った。この機構中に登場するN-シリル化η^2-イミダト錯体の観測を試みたが系が複雑となった。そこで(C_5Me_5)(CO)_3WSiR_3(R=Ph, p-Tol)を用いて同様の検討をおこなったところ、(C_5Me_5)(CO)_2W{(^iPrO)C=NSiR_3-κ^2C,N}(R=Ph, R=p-Tol)の単離に成功した。後者の錯体についてはX線結晶構造解析を行い、構造の確認を行った。
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