研究概要 |
アルキンの[2+2+2]環化付加反応は,三つの炭素-炭素結合の形成を経て一挙に芳香環を構築する反応であり、特に近年、反応基質としてアラインを利用した反応が報告されている。一方、アラインの含窒素類縁体であるピリダインの有機合成における利用はDiels-Alder反応などに限られており、[2+2+2]環化付加反応に用いられた例は全く報告されていない。今年度の研究において我々は、アルキンとピリダイン間の[2+2+2]環化付加反応の開発に成功した。すなわち、オルト位にシリル基を持つピリジルトリフラートにCsFを作用させることで系内で生成させた3,4-ピリダインとジインとの[2+2+2]環化付加反応がニッケル触媒を用いると非常に穏和な条件下で進行することを見出し、種々のジインと置換基を持つ3,4-ピリダイン前駆体との反応により、対応するイソキノリン誘導体が良好な収率で生成することを明らかとした。本反応は分子内反応にも適用でき、イソキノリン構造を含む4環式複素環を一挙に合成することも可能であった。2分子のアルキンと3,4-ピリダインの分子間[2+2+2]環化付加反応は、位置選択性の制御やアルキン自身の[2+2+2]環化付加反応の抑制などが必要となり、反応としてより難易度が高い。我々は、プロパルギル位に酸素官能基を持つ1,3-ジインが良好な反応性を有することを見出した。すなわち、プロパルギル位に酸素官能基を持っ1,3-ジインを基質とした反応においては、非対称アルキンを用いているにもかかわらず[2+2+2]環化付加反応は完全に位置選択的に進行し、酸素官能基を持つ置換基が5位及び8位,他の置換基が6位及び7位に配向されたイソキノリン誘導体のみが生成することを見出した。
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