研究概要 |
コバルト錯体触媒を用いるオレフィン類の官能基化反応では,炭素-炭素二重結合に対しコバルトヒドリド錯体が付加した中間体であるアルキルコバルト錯体に求電子剤が反応し官能基化が完結すると考えている。求電子剤の共存がない条件で触媒量のビス(アセチルアセトナト)コバルト(II)錯体の存在条件,N-メチルクロトン酸アニリドに対し,フェニルシランまたはトリエチルシランをヒドリド源として反応を試みたところ,飽和カルボン酸アニリドが良好な収率で得られ,中間にアルキルコバルト錯体の生成が確認された。そこで,酸素雰囲気で同反応を行なったところ,分子状酸素が求電子的に反応しα-トリエチルシリルペルオキシ体が,室温24時間後に位置選択的に中程度の収率で得られた。次に種々のアセチルアセトナト金属錯体の差触媒能の探索を行なったところ,コバルト(II)錯体の他にマンガン(II)錯体でも低収率ながらα-トリエチルシリルペルオキシ体が得られたが,鉄(II)・ニッケル(II)・オキソバナジウム(IV)・銅(II)錯体を用いた場合には原料の消費は全く観察されなかった。特にコバルト錯体の酸化電位を測定した結果,ビス(ジピバロイルメタナト)コバルト(II)錯体のような酸化電位の低い錯体を触媒として用いた場合には,α-トリエチルシリルペルオキシ体の生成とともに対応するケトン体の副生が観測されるのに対し,ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)コバルト(II)錯体のように酸化されにくい錯体はこの反応の触媒としては作用しないことが明らかになった。反応条件の最適化の結果,α,β-不飽和カルボン酸アニリド類のα-トリエチルシリルペルオキシド化反応が高い選択性・高い収率で得られることがわかった。さらに,アミド類の検討の結果,オキサゾリジノンを有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体にも本反応は適用可能であることがわかった。
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