研究概要 |
液晶に代わる薄型ディスプレイとして注目が集まっている有機ELの発光材料には重金属錯化合物が用いられる.本研究では,重金属錯化合物において重要とされるスピン軌道相互作用および非断熱相互作用を考慮した理論的手法を用いて輻射過程を実用的なレベルで記述した.この手法を確立することによって,燐光材料として用いるための材料分子の理論的設計を可能にした.現在,この方法を用いて基礎分子(水素化物など)および適切なイリジウム錯体および白金錯体について理論計算を行うことにより,新規燐光材料分子の設計を目指している. また,発光デバイス中の発光層および電子・正孔の注入・輸送層における材料分子のふるまいを知るために,周期的境界条件を用いたNTVアンサンブルの分子動力学シミュレーションが可能なQuantum Mechanical/Molecular Mechanical Molecular Dynamics(QM/MM/MD)のプログラムを開発した.このプログラムを用いて,より効率の高い適正な発光波長を有する燐光材料のための発光環境の構築も目指している.単分子では開発現場への寄与を十分にできないと考え,デバイスそのものをシミュレーションすることにより,有機ELデバイス開発により直接的に貢献できるものと期待される.この目的を具現化するために,学内において実験グループと情報交換をすることにより企業とのコンタクトを目指した研究グループ(分子エレクトロニックデバイス研究所)を組織化し,定期的に研究会を開催している.
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