全天X線監視装置MAXIは、2009年6月から国際宇宙ステーションに搭載され観測を始める。これまで開発を続けてきたMAXI地上データ処理システムをベースに、ガンマ線バーストを軌上で検出後、数秒以内にインターネットを介して全世界に向けてバーストの発生を通報するシステムの開発を行っている。 特に20年度は本研究課題として、そのMAXI地上システムの一部である突発天体発見システムにおいて、研究計画通り、突発天体(とりわけガンマ線バースト)発見のための時系列解析部のアルゴリズムの改良等を行った。具体的には、天球の領域に依存する平均値に依らず、あらゆる領域で発見のための閾値を最低レベルまで下げることができるように閾値のアルゴリズムの改良等を行った。その結果、ガンマ線バーストなどMAXIでは比較的発見が難しい弱い強度の突発天体まで全天でまんべんなく発見できるようになった。 また、複数の突発天体発見システム(別の計算機)から速報システムにデータ(発見位置や時刻等の条件が入った構造体データ)をTCP/IP通信を用いて送受信するインターフェイスを完成させた。受信側で同時に複数のデータが取得できるようにPthreadsを用いて複数の通信回線をはり、各突発天体発見システムから送られてきたデータを各スレッドで共通のメモリ領域に書き込み、一括処理ができるようにした。このような分散システム処理により、各計算機に対する負荷の軽減だけでなく、複数の計算機で突発天体発見のための異なる閾値や条件により突発天体を発見することによりその信頼度の向上が期待できる。
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