研究概要 |
さまざまな市販酸化チタン粉末に光析出法により金を析出させたところ, 紫あるいは灰色に着色した. 拡散反射スペクトルにおいては, 可視光領域に強い吸収が認められた. 幅広い可視光吸収, すなわち表面プラズモン共鳴(SPR)吸収のピーク波長と粒子径について, もちいた酸化チタンの粒径依存性を調べると, 金粒子が大きくなるとともにSPRピーク波長が長波長側にシフトした. また, 酸化チタンの粒径が大きくなると金粒子の粒径が大きくなる傾向は, 酸化チタンの結晶構造とは無関係であった. いくつかの金担持酸化チタンについて作用スペクトルを測定すると, いずれも拡散反射スペクトルと類似していたことから, この反応が金粒子のSPR吸収により開始されることが明らかになった. 拡散反射スペクトルにあらわれるいくつかの幅広いバンドは粒径のちがいや, 粒子の異方性にもとづくものと考えられるが, 作用スペクトルも同様に変化したことから, SPR吸収であれば同様の光反応を誘起するものと思われる. また, 光触媒反応速度におよぼす金の粒子径の影響を検討したところ, 酸化チタンがアナタースとルチルのいずれの場合でも, 金の粒径とともに速度は大きくなった. 金の粒径の増大とともにSPR吸収のピーク波長が長波長側にシフトするので, 金の粒子径が増大すると光吸収強度が増大するが, それ以上に速度が大きくなっているものと考えられ, 酸化チタンの粒径による速度の増大効果も考えられる. 金コロイドをシリカに担持して, 金担持酸化チタンと同様の実験条件において可視光(>450nm)を照射してもほとんど反応が進行しないこと, 酸化チタンの紫外光誘起光触媒反応において酸素の還元反応が酸化チタン上で進行すると考えられていることなどから, 金のSPR吸収により開始する有機化合物の酸化反応の機構として, 金から酸化チタンへの電子注入と, 注入された電子による酸素の還元が推測された.
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