研究概要 |
ナノ金属微粒子あるいはナノサイズの粗さをもつ金属表面に吸着した分子の赤外吸収強度が異常に増強される現象、表面増強赤外吸収(SEIRA)、の増強機構を電磁気学的観点から検討し、新たな理論モデルを構築した。このモデルは、従来のような有効誘電率近似を用いず、微粒子間の相互作用をより厳密に扱うとことに特徴がある。その結果、基板に誘起されるimage dipoleの影響を組み入れることが可能になった。この理論モデルは、増強度ならびにスペクトル形状が微粒子の形状、サイズ、密度に依存するという実験結果を適切に表現した。また、基板に誘起されるimage dipoleがSEIRAに大きく影響することを初めて明らかにした。モデル計算を通して、スペクトルを変形することなく増強度を最大にするナノ構造を明らかにした。 並行して、SEIRAを利用した固液界面反応計測を行い、Pt表面における硝酸化合物の還元反応とC1化合物の酸化反応、機能分子・錯体によるAu表面の機能化とその評価、電気二重層の再構成高速ダイナミクスの解析などを行い、いくつかの新しい知見を得た。最も重要な成果は、Ag電極を4, 4'-ビピリジンで修飾することにより、水の電気分解による水素発生が格段に促進されることを見出したことである。さらに、この反応が、単分子吸着した4, 4'-ビピリジンの酸化還元サイクルで触媒されていることを明らかにした。この結果から、分子の電子状態の制御により、さらに高活性な触媒システムが開発できる可能性があることを示唆された。さらなる検討は、ヒドロゲナーゼのような生体系における水素活性化機構の理解にも役立つものと期待される。
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